6-2 共同任務 その五 標的に追い打ちを掛ける
「では、わたくしたちはこれで失礼致しますわ」キラが席を立つと「待て! 待ってくれ!」大声で呼びとめ「わかった。あんたには勝てんよ。申し訳ないことをした」
振り返り、冷たい視線を送ると「すまんかった」頭を下げる。
この光景を見ていた側近たちは驚いた。あの老師が頭を下げて謝るなんて、と思っているのだろう。
「ま、いいでしょう。今回までは無かったことにしますわ」
「そうか。そうしてくれるか」老師はホッと胸を撫でおろす。
キラが元の席に座りなおすと「では、お支払いの話をさせていただきますわ」
「いくら欲しいのかね?」
「いくらお出しになるおつもりですの?」
「エッ?」
「わたくしどもは、コレクションを大事に扱ってくださる方にのみ、お譲りしてますの。そういう方たちは、こちらの希望以上の額を、最初にお支払いくださいますわ」
「わかった。君たちのところには何名おるのかね?」
「現在、お譲りできるのは八名ですわ」
「そうか。一名五億ヴィータ出す。八名で四十億ヴィータ。それと、ここに所有してる五名のケア分、十二億五千万ヴィータ、即金で払おう」
「いいでしょう。但し、支払は一週間後で結構ですわ」
「なぜじゃ?」
「今いる五名が元気になったときでいいと申しているのです。そのほうが納得していただけますでしょう?」
「うむ、わかった」
老師が契約書にサインすると「では、わたくしたちは荷物を取りに一旦ホテルに戻りますわ。
くれぐれも、彼らの部屋を覗かないようにしてください。
彼らは気配を感じただけで起きてしまいます。
もし覗かれていることがわかったら、彼らは二度と眠ることがないでしょう。
これがどういうことを意味するか、おわかりになりますでしょう? よろしいですわね?」
「承知した。その約束、必ず守る」
「では、失礼致します」
その後、側近たちに見送られて二人は屋敷をあとにした。
ホテルに戻ると荷物をまとめてチェックアウトを済ませ、キラ宛に届いた小包を受け取るとホテルの売店でワインとジュースを購入し、老師の屋敷へ戻る。
リビングルームへ入ると、気配で彼らが起きてしまった。
「心配しないで、私たちよ。起してしまってごめんなさい。さあ、もう少し眠って」
彼らが再び眠りについたのを確認したあと、買ってきた飲み物をリビングに備え付けの冷蔵庫へ入れたとき、ドアがノックされたので「俺が出る」ショウがドアを開けると側近がいて「老師から、お手伝いするように言いつかって参りました」と言うので「では、早速お願いするわ。まず、彼らのデータを見せてちょうだい」
「かしこまりました。すぐに揃えてお持ちします。隣の部屋でお待ちください」
側近は左隣の部屋へ案内すると一礼して出ていく。




