2-1 「予測装置」の本領発揮
「ジェシー。俺たちがそっちへ向かえるかは、イベントの次の日の月曜に、先生の診察後の判断で決まる。OKが出れば翌日には出発できるが、そうでない場合は、プランBへ作戦を変更することになる」
『わかりました。それで、出発できそうですか?』
「なんとも言えないな。ラルはだいぶ良くなったから大丈夫だと言ってるが、少し動くとダルそうにしてるから、まだ体力が戻ってないんだろう。途中で倒れでもしたら動けなくなるから、慎重に行こうと思ってる」
『責任感の強い彼女らしいですが、少しは自身を労わってほしいですね』
「そうだな。まあ、無茶はさせないようにしてる分、計画どおりにいかないところの調整が、常に必要になってくる」
『そのカバーはできるだけ対応します』
「悪いな。ジュリアスやシルビアにも、情報を共有しておいてくれ」
『承知しました』
『ちょっといいか?』ティスが話の区切りで声を掛けてくる。『今時点の見解でいい。カテリーナ、「火の貴族」の彼女はどこにいると思う?』
「それは……たぶん、あそこにいると思う」
あまりにも意外な返答に、ティスだけでなくジェシーも驚き『どこからその発想が出てくるんですか?』聞き返すと「いろんな情報をすり合わせて、予測しただけだ。彼女のことは別途調査してるが、今回の計画が完了したあとに、細かく調べる予定だ」
『エミア様たちが動いてくださってるんですか?』
「いや。ウィルシーたちフロス アクアエ(水の精霊)に動いてもらってる」
『女王ウィルシーが!』
「そうだ。けっこう情報を取ってきてくれたから、彼女の居場所も予測できた。今回の件のあと、エミアたちにも調査に加わってもらう予定だ」
『その予測から、カテリーナは、無事だと思うか?』ティスが冷静に聞こうとしているので「そうだな。彼女は無事だとは思う」
『なぜそう思う?』
「こう言ったら怒るかもしれないが、カテリーナはラルと同じ年くらいなんだろう?」
『ああ、そういう理由か……』ティスがため息を吐く。
「あくまでも、予測範囲内だ……」
『……わかってる。でも、生きてる可能性があると言われるほうがいい』
「そうか……」
『それにしても、本当に、あなたはどこまで先読みできるんですか?』感心するジェシーに「それ程ではないさ。まあ、ラルからは「予測装置」と言われてるけど」
『アハハハッ、「予測装置」ですか! いつからマシンになったんですか?』
「とりあえず人間だからな」
『彼女もうまいネーミングを付けますね!』ツボに入るジェシー。
「シルビアが「記憶装置」と呼ばれてることを知って、付けたらしい」
『僕が言ったことがキッカケだったんですか?』
「そうらしいな」
『それはすみません』




