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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第八章 ルナノヴァ国の秘密
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1-2 イベントの参加者

 

 午前十時。

 イベントにエントリーしている五十組、計百五十人が広場の西の端にあるスタートゲートから一斉に出発し、ルナノヴァ国の西の端にある湿地帯へ向かって、街中の大通りを走っていく。

 

 沿道には参加者にエールを送る者や手を振る子供たちがいて、けっこう盛り上がっている。


 このイベントのルールは三名一組で行動し、湿地帯にだけ生息するピンクのフルーツ シンチェリタス(真実)を採ってくるというものだが、その湿地帯へ行くには、例の結界が張られていると言われている広大な森を抜けていかなければならない。


 毎年、この森の中でアクシデントに遭って脱落していくチームが多くあり、そのアクシデントも多種多様で、この難関を通り抜けることができるのは、強靭(きょうじん)な神経と反射神経にあるらしいという噂もかなり前から浸透している。


 スタート後、大勢のエントリー者たちと一緒に走っていると、ジェシーが並走しているフレンティーヌを見て

(ヘェ、運動嫌いで買い物好きの一般的なお嬢様かと思っていたら、苦しい顔をせず、きれいなフォームで走ってる。親の方針なのか自分の意思なのかわからないけど、けっこう鍛えてるんだな。これはあとでショウに報告しておこう)


 フレンティーヌを挟んだジェシーの反対側にいる「土の貴族」のティスも、邪魔でしかないフレンティーヌを見る目が変わっていた。


(普段のつっけんどで高飛車な態度は、もしかしたら、親の教育だったのかもしれないな)


 真剣に走るフレンティーヌを見ていると「ジロジロ見ないでくださいます!」キッとした目で見るので(前言撤回! やっぱ高飛車でイヤなお嬢様だ!)怒りがこみ上げてきたので握りこぶしを作り、眉間にしわを寄せる。


 その光景を見ていたジェシーが(まったく。なにやってんだよ。これからチームとして優勝を目指すところなのに、仲違(なかたが)いしないでほしいな)と呆れていた。


 そのジェシーたちは走者の中では中間より少し上のところで走っており、エントリー者をそれとなく観察する。


 自分たちの仲間がいないか。

 怪しい素振り、または挙動がおかしい人物はいないか。

 そして、自分たちを監視している者がいないか。


 偏見を持たずに見ていると、街中からいつの間にか郊外に出ていて、その先に例の森が姿を現してくる。


 スタートしてから四十分くらい過ぎたころ、森に入る手前に設置されている休憩所で飲み物をもらい、ゼッケンのナンバーを伝えて、第一休憩所を通過した記録を付ける。


 幸い一回目の休憩所で脱落者はでず、参加者は汗を拭いたりストレッチをしたり、思い思いに行動している。


『どうだった? 怪しい奴はいたか?』ティスが話し掛けてくるので『いえ。特に目についたものはいませんでした』


『この中で一番怪しいのは、あのお嬢様だな』少し離れたところで、休憩所のスタッフからボトルのミネラルウォーターとタオルをもらい、汗を拭きながら水を飲んでいるフレンティーヌを見る。


『彼女、ただのお嬢様じゃないぞ』

『当然ですよ。この領地の領主であるオルトが招待した客の一人なんですから』



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