53-5 意外な参加者
「実は一昨日、ティスから電話をもらったんです。
なんでも、エミア様の指示で来たというイータル ヴェンティの少女二名から現状を聞いて、どうしてもイベント会場の森に「森林の迷宮」が張ってあるか調べたいからと、同僚の刑事二名に、今、ルナノヴァに知り合いがいて入れるチャンスだと誘い、ゴリ押しでその日のうちに出張届を受理してもらい、誘った同僚たちと一緒に船に乗って、大陸に渡ったそうです。
着いた先の町で借りたレンタカーを、三名で代わりながらノンストップで車を走らせ、隣の国まで来たらしくて、国境の検問所まできてるから迎えにこいと言われて、驚きました」
「あ~……確かにティスは、昔から、思い立ったら猪突猛進的なところがあったけど、私たちの横を素通りしてったのね?」
「あなた方もルナノヴァにいると思ってたそうですよ。まだ港町にいたんだったら、一緒に乗せてったのに、と言ってました」
「それはできないから、先に行っててもらっていいんだけど」
その時、部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。
「アッ、きっとティスですよ。ジュリアスが電話を掛けてくれたんです」
「そうなの?」
ドアの開く音がして「ラルと電話が繋がってるって本当か!」ドガドカと足早に近づいてくる音がする。
「ククッ。ラルが猪突猛進型だと言ったのがよくわかるな」携帯のスピーカーから聞こえてくる足音や会話を聞いて、笑いだすショウ。
「ラル!」
「そんな大声出さなくても聞こえるわよ」
「本当にラルなのか!」
「もう、数日前に話したでしょう?」
「それはそうだけど、どうしてルナノヴァにないんだ? そんなに体調が悪いのか?」
ティスの声は男性にしては少し高く、少年のような感じがする。
「ちょっとね。でも、今の場所に移動してからはリラックスできるようになって、気分的にも楽になってきてるから」
「そうか。ラルは昔から気遣い屋さんだったからな。自分のことを後回しにするから、突然倒れることがあったし。とにかく、無理はするなよ」
「うん。気を付ける」
「それで、いつ頃こっちにこれそうなんだ?」
「週明けに定期診断があるから、その時に先生からOKが出たら、行ける」
「わかった。フェスティバル期間中にはこれそうか?」
「たぶん、行けると思う」
「じゃあ、それまでに、例の森を調べとくよ」
「お願い」
「ラルは、そこにカテリーナが隠れてると思ってるのか?」
「まだわからない。けど、もし「森林の迷宮」が張ってあったら、かけた理由があるはずでしょう?」
「そうだな。掛けてあったら、その理由を突きとめる必要があることと、中に誰かいるのか。または、なにか隠されてるものが置いてあるのか」
「それと、もう一つ追加して」
「なに?」
「どうして、こんな危険な場所に結界を張ったのか?」




