53-2 意外な参加者
「フェルティバルが終わる前にこられませんか? 有名と言われるだけあって、かなり見ごたえがありますよ。街全体がオモチャ箱みたいに不思議な国になってます」
「そうなんだ。行きたい」ショウを見ると「今日の定期診断の結果から考えると、もしかしたら行けるかもしれないな。次の検診日が来週の月曜だから、その時聞いて、先生がOK出してくれたら行けるだろう」
「フェルティバルはいつまでやってるの?」
「二週間だそうです。泊ってるホテルのロビーに貼りだされてますよ」
「頑張って行けるようにしなきゃ!」
「そういえば、前より声が元気ですね。体調が良くなってきてるんですか?」
「そうなの。ここはマンスリーのマンションなんだけど、最上階だから住人くらいしか出入りがなくて、その住人も昼間は仕事でいないからけっこう居心地よくて、快適なの」
「それはいい場所に移動しましたね。ホテルにいたときよりのんびりできるなら、すぐに良くなりますよ」
「やっぱり、不特定多数の人間が出入りするところは落ち着かなかった」
「わかります」
「もう少し早くここに移動できてたら、イベントに参加できたかもしれなかったな……」
「そうなったら、グランチェストのお嬢様と、参加枠の取り合いになってましたよ」
「アッ」
「ショウは向こうの家族とボディガードに囲まれて、拉致されてたでしょうね」
「拉致?」驚いて隣のショウを見ると「……さすがに、ボディガード二人に囲まれたら厳しいな」眉間にしわを寄せる。
「部屋に監禁されて、娘と結婚しろと脅されるの?」
「それはあり得そうですね」肯定するジェシー。後ろで、堪えつつも笑う声が聞こえる。きっとジュリアスだろう。
「マジでやめてほしい……」
「目を付けられた相手が悪かったとしか言えないですね」
「行かなくてよかったのか」
「ラルはフェスティバルを見たいんだろう?」
「……だけど」
「お嬢様はショウが来ないと思っているので、遅くに来たら、彼らは別のところへ移動してるかもしれませんよ」
「それなら大丈夫だね」
「最後までいる可能性がゼロでないことをお忘れなく」横から忠告して来るジュリアス。「私たちがあなた方と交流があることを知ってますから」
「君たちと合流する可能性を考えるか」
「そうです」
「やっぱり、行くのやめよう」
「どっちなんだよ」
「……それは」
「森の結界を確認したいんだろう?」
「……うん」
「行ったからといって、必ずグランチェストたちと会うとは限らないだろう?」
「それは考えたほうがいいですよ」またしても忠告するジュリアス。
「……そうだな」頷くショウ。
「そういえば、シルビアはどうしたの? 声がしないけど、いないの?」
「シルビアは組織の調査員と合流したので、別行動してます」
「そうなんだ」




