50-2 重なる場所
「それとは別に、ご老公の隣国の領主である、例の双子が動いてることが気になる」
「そういえば、今、双子の領主が禁足地を調べに行ってるんだよね?」
「それなんだが、もし、禁足地に秘密の通路があるんだとしたら、ラルたち寄りにいると思われるご老公が、いくら仲がいいと言われてる隣国の領主の双子に、禁足地を調べるように依頼するとは思えない。逆に、禁足地を守るように依頼したと考えるほうが妥当な気がする」
「それは、例の双子の領主も、秘密の通路があることを知ってるから?」考えながらラルが言うと、ハッとした顔をするショウ。「その可能性はあるな」と言って考えはじめる。
「でも、双子の領主のところには、以前、アディやジットが狩り人のリーダーとして所属してたんだよ」
「しかし、アディが幽閉されてた彼らを裏で逃がしてたと言ってただろう?」
「……そういえば、その話を聞いたとき、ちょっと不自然さを感じた」
「幽閉されてる彼らが一名でもいなくなれば、すぐにバレるはず、だろう?」
「うん」
「それは俺も気になった」
「ショウも気付いてたんだ。でも、アディはなにもフォローしなかったよね」
「ジットもなにも言わなかった。ここにも、なにか裏がありそうだな」フウッと息を吐くと「さて、どうやって真相を確かめるか」
「まずはシンシアに話を聞いて、エミアやウィルシーたちに依頼してる調査報告を聞いたあと、重要事項をピックアップして、判断する感じだね?」
「そうだな。まずは情報収集からだ。でも、今日はもう遅いから、シンシアに連絡するなら、明日、療養所の見回りが終わった午前十一時前頃なら、彼女も休憩室で担当者たちとお茶を飲んでるだろうから、電話に出られるだろう」
「そうだね」サイドテーブルの置時計を見ると、日付が替わろうとしていた。
「明日は午前十時にエミアたちが来る。先に彼女たちの話を聞いて、その後にシンシアに電話すればいい。ああ、俺の携帯を貸すから、それでかけろよ。盗聴妨害対策済だから」
「わかった。でも、この場所でも盗聴される可能性があるの?」
「ここはどこだ?」
「……悪魔の巣窟です」
「そこで、とりあえず一般的な防止対策の携帯で、安全が確保できると思うか?」
「私の携帯だって、それなりの対策をしてます!」
「それなりだろう?」
「……そうです」
「なら、完璧な対策済の俺の携帯を使ったほうが、ずっと安全だよな?」と言われ、ムッとすると「そうです……」
仏頂面のラルを見ると「携帯貸して。ラルのも完璧な対策をしておくから」
そう言われて、サイドテーブルに置いてある携帯を渡すと、パスワードを聞いて機能や設定を見ていきつつ「携帯の機能を確認してアプリとかインストールするから、少し時間が掛かりそうだ。シンシアにはPCからチャット連絡しろよ。ああ、ラルのノートPCにはばっちりセキュリティ掛けてあるから、安心して使えるぞ」
「……わかった」
メカオタクのショウが対策したPCなら、かなりのメカオタクでなければ防衛線を突破できないだろう。




