50-1 重なる場所
「ラルがいた国の南側に海があって、その西側に結界が張ってあって近づけない場所がある。今、俺たちがいるこの大陸の領主の一人、ご老公が統治してるアルビオン国の南側、海に面した西側になにがある?」
「アッ! シンシアが調査してた禁足地!」
「位置的にピッタリ合ってるのが気になった」
「ヤダ……もしかして、本当に秘密の通路があるのかもしれない。だからシンシアのお父様が、アルビオン国のご老公と親しかったのかも……」と言うので「本当に?」聞き返すと、ラルは少し考えて「これは、口外したらいけないと言われてるタブーのことなんだけど、国のどこかに、人間界に通じてる秘密の通路があるという噂が昔からあるの」
「すごい、おあつらえ向きの噂だな」
「でも、その通路の先がとても恐ろしい場所なので、面白半分で立ち入らないようにするために、結界を張って封印してるって言われてるけど……」
「今は推測の域を出ないが、俺も隠し通路があるんじゃないかと、その可能性を考えたよ」
「今度シンシアに、どうしてあの場所を調べてたのか、ちゃんと聞いてみる」
「実は、もう一つ、重大なことに気付いたことがある」
「重大なこと?」
「もし、禁足地が秘密の通路の出入り口だとしたら、そこからラルがいた国へ入れたりしないか?」
「アアッ!」
「だから、誰も入れないように、人間側には禁足地として。ラル側には結界を張って封印し、入れないようにしてたとも考えられる」
「……でも、秘密の通路があると、まだ決まったわけじゃないから」
「だから、確認する必要があるんだ。仮に、秘密の通路があったとして、ストレートにラルがいた国へ入れるわけじゃないと思う。何かしらの仕掛けがあるはずだけど、ラルがいた国への入り口が閉ざされたと言われてる今、このことが広まったら、狩り人の大群が禁足地に押し寄せてきて、大規模な争いが起きるかもしれない」
「でも、あそこはご老公の領地。勝手に入ったら、禁足地へ着く前に抹殺されるんじゃない?」
「だろうな」
「……じゃあ、どうやって禁足地まで行くの? ご老公に盾つく強者がいても、勝ち目はないと思うけど……」
「だから、誰がどんな作戦でご老公に立ち向かうのか、見ものだろう?」
「……楽しんでる?」
「まさか。ご老公の防衛策を確認できるチャンスでもあるということだよ。狩り人の中には、頭の切れる奴が少なからずいるから、どうやってそいつらの侵入を防ぐのか。お手並みを拝見させてもらうんだ。でも、そのご老公も、今、体調を崩して伏せってると噂が流れてるから、チャンスとばかりに押しかけてくるだろうな」
「ダメじゃん」
「ご老公だって自分が高齢だということを考えて、対応策を立ててるよ」
「そうかもしれないけど……」
「領主の中でも温和なほうだと言われてても、この大陸の領主の一人なんだぞ。ちょっとでも隙を見せたら、他の領主に潰されることくらいわかってるはずだ」
「……それはそうだろうけど」




