49-3 夢中になれるものは必要
オカルトものが大嫌いなラルには、ただの拷問でしかないホラー系。
「なんで嫌いなんだよ。あんな面白いもの、なかなかないぞ」実は、ショウは結構ホラー系が好きなタイプ。「わざわざ襲われに、暗闇の中、懐中電灯だけで、しかも一人で、絶対なにかいるとわかってるのに、怪しい家の中を歩き回るなんて、おかしいだろう?」
「……ショウも、頭がおかしい」狂人扱いするラルに「さすがに俺も、グロ系はダメだぞ」
「それはもっとダメでしょう」ラルがさらに冷たい目で見るので「……以後、注意します」素直に引き下がる。
ここで機嫌を損ねたら、体調の回復が遅れてしまうかもしれないからだ。
(なるべく平穏に過ごすようにと、先生からも注意されてるからな)
結局、残された暗号を元に、隠された宝を探していく現代版のトレジャーハンター映画を見ることになり、ラルは主人公と一緒に隠された暗号を見つけ、解読に挑み、宝を探しにいく冒険にどっぷりはまって、映画の中の登場人物と化していた。
(キャスティングのオーディションに出たら、一発で合格するんじゃないか?)
やつれて俯いていたときとは別人のように、困難に立ち向かって突き進むラルを見て(お子様だな)と思いつつ、時に一緒になって謎解きしたりして、ショウも宝探しを楽しんだ。
約二時間ちょっとの冒険が終わると「私も暗号の謎を解いて、すごいお宝を見つけたい」と、余韻に浸っている。
「そういえば、ラルの国では、隠された財宝伝説とか、タブーとされてることとか、云われ付きの言い伝えとかないのか?」ショウが何気なく聞くと「そういえば……」
「なに? あるのか?」
「私たちの国の南側に海があるんだけど、海の西側の奥に入ったらいけないと、昔から言われてる場所がある」
「ラルがいた国に海があるのか?」
「そこ?」
「いや、てっきり国は森の中にあるんだと思ってたから」
「この世界から見たら森の中っぽいって思われても仕方ないけど、マラ ルクス、海の精がいる場所が必要でしょう?」
「マラ ルクス? 海の精? ああ、この大陸に来るときに乗せてもらったケッドマン社長のクルーズ船で、海を渡ってるときに波間に見えた彼らのことか。納得。それで?」
「そこには、私たちの初代期にいたと言われてる、悪しき力を持った者を閉じ込めてるところがあるので、近付いてはいけないと、子供のころからきつく言われてる場所があるの。
それに、誰も行けないように結界が張ってあるんだけど、私たちのお茶会仲間の「土の精霊」のティシャが、あの場所に掛けてある結界が「森林の迷宮」だと言ってたことがあるの」
「ティシャって、スペ・シン・フトゥルム市の中央警察署にいる刑事の弟だろう? 「火の貴族」のカテリーナを助けて行方不明だっていう」
「そう。結界の名前を聞いて、前に話してたことを思い出したの」
「実は、俺も今のラルの話を聞いて、あれって思ったことがあるんだ」
「なに?」




