4 共同任務 その三 監禁場所の移動
一階へ戻るとキラたちは貴賓室へ通され、メイドがお茶を持ってくる。
そして、向かいのソファに座る老師が「他に何か、気を付ける点はないかね?」と聞いてくるので「老師ともあろうお方が、彼らの研究を怠っていただなんて、致命的な汚点ですわ」
「調べることは調べたんじゃ。そしてあの部屋を作った」
「では、ずいぶんと手を抜いた調べ方をされたんですのね」
「我々が見てきた中で、ここが一番ひどいですよ」ショウが付け足すと「本当に、わしの部下にはロクなのがおらん!」隣に立つ側近を見ると首を竦める。
「でも、名立たる老師のためですわ。わたくしたちが教えて差し上げます」
「そうか。そうしてくれるか」シワクチャな笑顔を作って喜ぶ。
「しばらくの間、ご厄介になりますわ」
「すぐに部屋を用意させる」
話を聞いていた側近の一人が部屋から出ていくと、入れ違いに別の側近が入ってきて、老師に耳打ちすると「サンルームの用意ができたそうじゃ。早速見ていただこう」
彼らのために用意された部屋は別棟の一階にあり、かなり広いリビングは半分がサンルームになっている。
床は一面フローリングになっていて、革製のソファが置いてあった。
「革製品は置かないで、布のものと取り替えてください」
控えていた男たちが素早く取り替えると「いいでしょう。彼らを連れてきてください」
数名の走る足音が遠ざかる。
「換気には気を付けて」
「オイ、ちゃんと聞いておくんだぞ」老師が隣にいる側近に言うとメモを取りはじめる。
「バスルームは近くにありますか?」
「部屋の向かいにスパがあります」メモを取る側近が答えるので「では、そこにも植物をたくさん置いて。そのスパは彼ら専用にしますので、他の人は使用しないでください。あとは気付いたときに頼みますわ」
そこへ、抱えられながら五名のシルバーフェニックスが入ってきた。
「奥のソファへ座らせて」指示を出すと「キッチンはどこですの?」
「何をするのかね?」不思議そうな顔をする老師に「彼らに与える食事の説明をしますわ」
「オイ、お連れしなさい」
メモを取っていた側近がドアへ向かうので、キラはショウに部屋に残るよう言い、側近に付いてキッチンへ向かった。
そのキッチンは屋敷が広い分、こちらも見事なくらい広かった。
側近は料理長を呼び、キラに紹介する。
「彼らに与える食事の説明からしますわ。まず肉類は避けてください。魚もです。卵とミルクは大丈夫です。それと、野菜を中心として、あまり手を加えたものは出さないでください」
料理長が細かくメモを取っていく。
「次に果物です。どのくらいの種類をストックしてますか?」
「この地域は様々な果物が豊富に採れますので、いろんな種類のものを取り揃えてあります」
「それは素晴らしいですわ」
初めて誉められて、側近が嬉しそうな顔をする。
「では、料理は指示したものを作ってください。先に果物を用意してもらえますか?」
「はい、すぐにご用意します」
料理長はメモをしまうと近くにいる数名の料理人に声を掛け、果物を保存室から持ってくると、食べやすいように切っていく。
五名分の果物がお皿に盛られるとワゴンに乗せ、メイドが押してキッチンから出ると、キラは後から側近と一緒に部屋まで付いていく。




