48-3 声に出す心の叫び
「私は……前に言ったと思うけど、この戦いが終わったら……国に戻らないといけないんだよ」
「どうして?」
「それは……」
「ラルが、各エレメンツ(五大要素)の中心にいるから?」
そう聞いて、ラルが驚きの目でショウを見るので「人間界とラルがいる国の均衡が壊れなければ、ラルと茶飲み友達が均衡を保つために、『なにか』をしなければならない状況にはならないと思うけど」
文字通り「絶句」しているラルに「ここまで見聞きしてきたら、どんなことがバックにあるのか、なんとなく想像つくよ」
するとラルが俯くので「だから、ラルがなにも心配せず、幸せを感じることができる場所を作りたいと思った」ラルのカップにお茶を入れ「この言葉の意味が分かるか?」と聞くと首を横に振るので「ラルが、ずっと笑顔でいられる場所を俺が作るということだ」
「ショウが? どうして?」意味が分からず、首を傾げるので「お子様ラル子ちゃんには、まだ理解できないかな?」
「そんなに難しいことなの?」
「難しい……ラルには難しいかもしれないな」
「なんで?」
「……きっと、この戦いが終わったら理解できるようになると思う」
「……そうなんだ」
「それまで、一緒に頑張ろうな」
その後、お茶を飲み終わるとラルが寝てしまったので、起こさないようにタオルケットを掛ける。
ショウにとっても、今夜のことはいろいろとわかることがあった。
それは、少女の気持ちに同調するラルの叫びを何度も聞いたからだ。
中でも印象に残ったのが「特殊能力が、邪魔にしかならないと思わせるほうがおかしいでしょう!」だった。
今夜のラルは、ショウのTシャツを握りしめて丸くなって寝ているのではなく、Tシャツを握らず、仰向けになってぐっすり寝ている。
(そういえば、こんな状態で寝るラルを見るのは初めてだ)
これが本来の姿なのだと、寝息を立てて寝ているラルの額にキスをする。
翌朝、ショウが朝食を用意していると、珍しくラルが起きてきて顔を洗いに行き、戻ってくるとテーブルに座るので「よく寝られたか?」
「うん。今朝は久しぶりにすごく気分がいい」と、スッキリした顔をしている。
「昨夜、主人公の少女と一緒に叫んだから、ストレスがなくなったんじゃないか?」
「そうかもしれない。なんか、同じような境遇だったから、気持ちがわかるなって思って、たくさん叫んじゃった」
「それはいいことだ。これから定期的にいろんな作品を見て、ストレス発散するといい」
「そうしたら、防音された部屋で見ないといけないね」と苦笑するので「ラルの叫び声は、戦闘機並みなのか?」
「ん~、戦闘機には勝てないと思う」
「それなら、ラルの部屋の隣は空き部屋だから、気にすることない」
「そっか」




