45 環境が与えるもの
翌朝午前八時。
アラームが鳴ったので目を覚ますショウが、いつもより明るいと思ってカーテンを開けると、外は真っ青な空と熱を発している太陽が出ている。
エミアたちが雨雲を移動させたので、元の青空が広がっていた。
「何日ぶりの太陽だ?」窓を開けてベランダに出ると、気持ちいい風が吹いている。
海はまだ長雨のせいで濁っているが、数日したら元のきれいな色になるのだろう。
ショウは部屋に戻ると隣のラルの部屋へ行き、変わらずショウのTシャツを握りしめて寝ている顔を見ると「ラル、朝だぞ」声を掛け、カーテンを開けにいく。
「ええ~、朝あ?」珍しくすぐに起きるので「よく寝られたか?」
「……うん」目をこすりながら起き上がり「静かだったから」
「……ああ、ここなら、いきなり人間が入ってくることがないからな」
「うん。ゆっくり寝られた」
「初めからこっちに来てればよかった。豪華なホテルなんて、滅多に泊まれないと思ったのは、俺たち人間の考えか」
「すごい。晴れてる」眩しそうに外を見るラルに「朝食を用意するから、顔洗ってこい」と言ってキッチンへ行くと、冷蔵庫から食材を取り出して朝食を作りはじめる。
顔を洗ったラルがダイニングのテーブルに座るので「ベッドにいなくていいのか?」
「大丈夫。今日は気分がいい」そう言うラルは、明らかに昨日と表情が違う。
そのため、食事の量も違ってくる。
「いつもはトースト一枚をやっと食べてたのに、今日は二枚も食べて大丈夫か?」唖然とするショウに「ブルーベリーのジャムがおいしい」笑顔でおいしそうに食べる。
温野菜のサラダも残さず食べ、食後の紅茶も熱さを確認しながら飲むので「胃がビックリしてないか?」
「お腹いっぱい」フゥ、と満足そうに息を吐く。
その後、薬を飲むとベッドに戻り、自分のノートパソコンを開くと、メールをチェックしはじめる。
昨日までとは別者のように元気なラルを見て「ミランドのように「鏡の精」に代役を頼んだりしてないか?」ティーポットを持っていくと「……してないよ?」怪訝そうに言い返すので「わかった」キッチンへ戻って、あと片付けを始める。
午前十時少し前。
「風の精」の女王エミアとアウラリートレ、アウラマリスが一緒にやってきて、部屋に入ってくると、テーブルに用意されているプチケーキをみて目を輝かせる。
「なんだ、二人も来るんだったら、事前に教えてくれよ」ショウがダイニングの椅子を持ってくると、カップを二客持ってくる。
ラルがいるベッド横に置いてあるテーブルに、エミア、アウラリートレ、アウラマリスの順番で座ると、ショウがティーポットからカップにお茶を注いでいく。




