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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第七章 休息の計画
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43-2 それぞれの移動

 

 翌日、お昼前にグランチェストたちがホテルから出発した。


 こちらも来たとき同様、付き添っている使用人たちが、エントランス前に停まっている高級車のトランクへ離れから大きなトランクを運びこみ、車の横に整列する。


 少しすると、オートクチュールの服を着たグランチェストたちがゆっくりと車に乗り込み、フロントマネージャーやドアマンに見送られてホテルの敷地から出ていく。


 その光景を、ショウは三階のラルの寝室の窓から見ていた。


「出発したの?」ベッドにいるラルが聞くと「ああ、今ホテルの敷地から出ていったよ」


「とうとう何も言ってこなかったね。ルナノヴァで会おうとか連絡先を交換しようとか言ってくると思ってたのに。どうしてだろう?」


「なにを企んでるのかわからないけど、まだまだ油断できないな」


(俺を娘と結婚させて、ラルを愛人にでもするつもりなのか?)ラルを見るグランチェストの顔を思い出し(そんなことさせないぞ)



 次の日の午後。

 バッグを持つショウがダイニングルームでラルとお昼を食べた後、フロントマネージャーにお世話になったお礼を言うと、看護師さんと一緒に、移動先のマンションへ向かった。


 大きな荷物がないのであれば車を出すと看護師さんが言ってくれたので、彼女が運転する軽自動車に乗り、途中でスーパーによって食材を購入すると、同じ道路沿いの小さな公園の隣にある五階建てのマンションの駐車場に入る。


 中規模のマンションはワンフロア七部屋で、ショウが借りた部屋は最上階の五階、部屋は奥から三つ手前で2DKの間取り。


 エレベーターで最上階まで行き、部屋に入ると中はきれいに掃除されていて、二部屋あるうちの左側の部屋に入ると、外が見える位置にベッドの用意ができていた。


「今日は雲が多くてどんよりしてますが、晴れると海がきれいに見えるんですよ」説明する看護師さんが、レースのカーテンを端に寄せる。


 ラルはスウェットに上着を羽織った状態で移動してきたので、ベッドに横になると血圧を測り、体調をチェックすると「大丈夫なので、今日はゆっくりしてください」


「いろいろとありがとうございます」ショウが玄関まで見送ると「なにかあったら連絡くださいね」と言って、ホテルに戻っていった。



 部屋に戻ってくると買い込んできた食材を冷蔵庫に入れ、お茶を入れるとラルの部屋へ持っていく。


 カップを渡すと熱さを確認するので「(ぬる)く入れてあるよ」それでも熱さを確認しつつ、少しずつ飲みはじめる。


 ベッド脇に椅子を持ってきて座るショウが窓の外に見える鉛色の海を見ると「やっと、本当の休暇が取れる」


「ここに来てからいろんなことが起きて、すごい情報量が入ってきたから、ちょっと疲れたね」

「それもラルにはよくなかったな。もう少し考えるべきだった」


「それは無理だよ。防ぎようがなかったでしょう? でも、ここに来たからオルトに関する重要な情報を入手できたし、入国が難しいルナノヴァへ行けるようになった。ジェシーたちとも会えたし、ショウだって、兄貴たちのその後のことが聞けて、わだかまってたことが解消できたんだよ」


「まあ、そうだけど、本当に情報量が多すぎた。内容をまとめるのにかなり苦労したよ。ここ一週間くらいの間に詰め込まれすぎじゃないか?」


「それは私もそう思う」

「さすがに頭がエンストを起こして、ショートするかと思ったよ」


「大変。冷やさないと火が出ちゃう!」

「ここで少し頭を冷やすよ」



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