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翌日の午前九時。
ホテル滞在中、電話以外で部屋から出ることがなかったオルトたち一行が、来たときと同様に、注目を浴びながらホテルを出発すると、同行するジェシーたちがあとを追うように出発し、午前十時にマンションの管理会社の担当と会う予定のショウが、看護師さんと一緒に、彼女の軽自動車で待ち合わせ場所へ出掛けていく。
その間、ラルは先生の言いつけを守り、ベッドで朝食を食べたあと薬を飲み、仮眠を取った。
その日の夕方、午後六時前、ジェシーからショウの携帯に電話がきた。
少し前にルナノヴァへ着き、予約していた街中のホテルにチェックインしたことと、シルビアが翌日、組織の調査員のリーダーであるレグナルと会うことになったとのこと。
「今のところ、順調にいってるな」
「そうですね。このまま進んでくれるといいんですけど」長距離を運転したため、少し声が疲れている。
「そういえば、グランチェストたちが明日出発すると、さっきフロントマネージャ―が教えてくれたけど、連絡いってるか?」
「はい。メールが来てます。ルナノヴァで予約してるホテルが同じなので、こちらでも食事をしようと書いてありました。その席でイベント参加の話をしたいんだと思います。そうそう、そのイベントですが、長雨の影響で一週間順延するようです」
「そうなのか。まあ、仕方ないな。道中大変だったろう?」
「舗装された道路を来たので、足止めされることはありませんでしたが、川の増水で道路が水没して、迂回したところがあったので、少し時間が掛かりました」
「やっぱり影響が出てるな」
「そうですね。でも、作物に影響が出始めていたくらい日照りが続いていたようなので、不作になるよりマシだと、ホテルの人達が言ってました」
「とにかく、今夜は早めに休んだほうがいい。声が疲れてるぞ」
「はい。ちょっと疲れました」
その後、定期的に報告を入れることを確認し、電話を切った。
「グランチェストたちが大人しいのは、向こうでジェシーたちと合流して、事を運ぼうとしてるからみたいだね」ショウが電話をスピーカーにしていたため、会話を聞いていたラルが「グランチェストが私たちの予定を聞いてきた?」
「いや。俺たちがルナノヴァへ行かず、しばらくここに滞在するとジェシーから聞いて、一旦、引いたらしい」
「そうなんだ」
「彼らは明日ルナノヴァへ出発するらしいし、俺たちも、明後日チェックアウトしてマンションへ移動するから、気にすることない」
「マンションの場所は知らないよね?」
「そのことは、他言しないように先生や看護師さん、フロントマネージャーに言っといたから、大丈夫だと思う」
「油断はできない。注意しておいたほうがいいと思う」
「まあな」
「マンションには、明後日、入居できるんだ」
「担当者に事情を話したら、最短で手配してくれたよ」
「契約は一ヶ月?」
「ああ」
「一ヶ月で良くなるかな?」
「入居希望者が多いわけじゃないから、契約期間内なら延長は可能だそうだ」




