40-3 カテリーナを助けた刑事
その後、お昼前にティスから電話がかかってきた。
オルトの代理人たちと昼食会を行ったスペ・シン・フトゥルム市の市長からの依頼で、市役所に出かけていたらしい。
最初、電話にはジュリアスが出たが、途中でジェシーと代わり、オルトの代理人たちと一緒に行動していたことを話すと、数分違いですれ違っていたことがわかって驚いた。
やはり彼は「土の貴族」のターナード公爵の子息で、弟のティシャを捜しているとのことだった。
もちろん、彼もキラのメンバーなので、刑事として高級官僚や会社役員と接触して情報収集を行っており、今回、スペ・シン・フトゥルム市へ転勤してきたことも、その一環とのこと。
そして、「火の貴族」のカテリーナを助けたのは、ティスではなく、弟のティシャらしいこともわかった。
「では、カテリーナ嬢の行方も分からないんですか?」
「申し訳ない。なかなか足取りがつかめなくて……」
「無事なこともわからないんですか?」
「ああ……まったく……」
「……そう、ですか」肩を落とすジェシー。ラルが聞いたらさぞかし悲しむだろうと話すと「ラルが一緒なのか! 彼女は無事なのか?」
「はい。今、体調を崩して療養してますが、無事です」
「そうか……よかった……」
「ほかに、例のお茶会メンバーで消息を知ってる方はいますか? 例えばファルークのこととか」
「ああ、奴か。だいぶ前に情報収集のために訪問した企業にいて、話したかったけどその機会がなくて、それっきり会えなかったんだ」
「……そうですか。それで、こっちの大陸へ来る予定はないんですか?」
「キラのメンバー全員に大陸へ行くよう通達が来てるから、ここでの任務が済んだら渡る予定だ」
「どうやってくるんですか?」
「それは刑事の任務上、秘密だ」
「ああ、わかりました。刑事の任務として大陸に来るんですね。それで、いつ頃こちらに来る予定ですか?」
「たぶん、来月くらいになるだろうな」
「そうなると、あと半月後くらいですか?」
「予定どおりに行けばな」
「ということでした」ジェシーがティスとの電話の内容を話すと「カテリーナの消息は不明のままなのね」やはり気落ちするラル。
午後のティータイム、またジェシーたちの部屋に集まっていた。
アイスアールグレイティーを飲みながら話を進める。
「ティスも、任務をこなしながらティシャを捜してると言ってました」
「カテリーナを助けた弟と同じ顔の兄君が刑事だったので、間違えたのか。それは仕方ないな」落ち込むラルの頭を撫でるショウが「兄君は国際刑事警察機構の刑事なんだろう? ということは、レンと同じように手引きをしてくれる組織か人物がいて、その伝手で大陸に渡ってくるんじゃないか?」
「ああ、そうでしたね。すっかり忘れてました。それで、あなたのご友人である刑事さんは、今、どこにいるんですか?」
「実は、すでにこの大陸に渡って来てて、ペラノイオにいたらしい。メールには近々移動すると書いてあったので、ほかの所へ移動してるかもしれない」
「そうなんですか。では、ティスもショウの友達の刑事さんと同様の手口で大陸に来る可能性がありますね。でも、もし同じ方法で渡ってくるなら、その刑事さんと連絡を取り合ってる可能性がありませんか?」
「俺もそう思うよ。だから、そのことを聞いてみようと思う」
「お願いします」




