35-4 お茶飲みメンバー
「とにかく、シンシアが結婚したら、「水の貴族」の事実上のトップとなる公爵となるのなら、結婚相手の申し込みが押しかけてきてたんじゃないか?」
「まあ、ね」
「だとしたら、こんな状態のときに、彼女が一人で行動するのはダメだろう?」
「そんなこと言ってる場合じゃなかったから……」
「ああ、キラのメンバーに選ばれたんだっけ?」
「……うん」
「そういえば、茶飲み友達、全員がメンバーになったとか言ってなかったか?」
「そうだよ。だから、どこかで会えるように生き残れよって、キラのメンバーとして、出発する、最後の日に……みんなで……」
「そうだったな」涙ぐむラルの頭を撫でながら、タオルで涙を拭いていくと「今のところ、生存が確認できてるのはシンシアだけか。これでカテリーナの消息が確認できればいいんだが」
「行方不明だなんて、すごく心配……」
「茶飲み友達イコール「かの国」の中枢か?」
「……まだ中枢じゃないよ」
「……まだね」
「……まだ」
「やっぱり、ジェシーたちに頼んで、「森林の迷宮」が張られてるか、カテリーナが匿われてるか確認してもらおう。とにかく、一刻も早く彼女を見つけることが先決だ。ジェシーはカテリーナと会ったことがあるんだろう?」
「うん、知ってる。ジェシーもお茶会に来たことがあるから」
「まずは、彼女の生存を確認することが優先だから、可能性があることはできるだけ調べよう。あとでジェシーに話しとく」
「でも、オルトの正体を探るチャンスなんだよ」
「もちろん、そっちも同時進行で進める」
「どうやって?」
「組織の調査班がいるだろう? オルトのほうは調査班に動いてもらって、カテリーナのほうをジェシーたちに動いてもらう」
「承諾してくれるかな?」
「くれるだろう。ジェシーも心配してたからな」
「そうだけど……」
「「森林の迷宮」確認後に、こっちの調査に合流してもらえばいい。彼らは組織のメンバーと会いたがってるから、いい機会だろう?」
「そうなると、グランチェストがジェシーたちに何を言ってくるのか、確認しないといけないよ」
「そうだな。食事が終わったら連絡をくれるようにメールしてあるから、電話が来たら聞いてみる。大丈夫。彼女は無事だよ」
「……うん」涙を拭くラルに、枕元に置いてある自分のTシャツを渡すと、両手で握って匂いを嗅ぐ。
「そんなに俺のTシャツの匂いが好きなのか?」
「……ボディシャンプーの匂い」
「……忘れてた。親父さんのと同じだったんだ」
「……一緒」
「ラルがファザコンだったとは思わなかった」
「ショウは、ブラコン、でしょう?」
「ん? 兄貴のことを話してるからか?」
「うん」
「そこまで言われるほどじゃないぞ」
「……そうなの?」
「今はラルコンかな?」
「……なに、それ?」
「かわいいラルちゃんにベッタリだから」
「……お子様だって、揶揄ってるのに?」
「揶揄ってなんかない。お子様のラルちゃんがかわいいって言ってるんだ」
「……言われてるように、聞こえない……」
「じゃあ、行動で示せばわかるか……だから! 寝るのが早いって!」
スーッ、スーッと寝息が聞こえてくるので「即効だな。このTシャツ、どんだけ睡眠効果があるんだ?」




