31-3 録音内容
『次に、両方ともグランチェストを囮と言ってる点だ。女性のほうは餌とまで言ってるところから、グランチェストは、最初から何かの囮に使うために呼んだことになる』シルビアが説明する。
「本人はそのことを知ってるのかしら?」
「知ってるだろう」あっさり言い返すショウ。「家族旅行は計画を隠すための隠れ蓑だ。ラル、妻も娘も、父親の仕事を手伝ってると話してたことを覚えてるか?」
「そういえば、今回の家族旅行も、日頃手伝ってくれているから、その労いだって」
『家族そろって曲者役ができるのは、すごいことだと思うよ』感心するジェシーだが『三人揃って目を光らせて、なにを狙ってるんだ?』
「それは、奴らの話の中に出てくる。フェスティバルのイベントだろう。ルナノヴァへ行くよう計画してる点は、両方とも同じだからな」とショウが言うので「例のフェスティバルのイベントに、なにか隠されてるようね」
「もしかしたら、狩り人以上の、捕獲用の罠が仕掛けてあるかもしれないな」
『そのイベントについて、いくつかネットに上がってるコメントを拾ってみました』チャットで繋がっているジュリアスが話に入ってくる。『なかなか興味深いことを書いてるコメントがありました』
『スタートのときは百組近くエントリー者がいたけど、国の西側に広がる森に入ると、中は迷路のように入り組んでて、自分たちの周りにいた人達がどんどん減ってって、ちょっと不気味だった』
『ちょっと暑かったけど、森の中に入ったら涼しくて、ハイキングしてるみたいだった』
『森の中に変わった花が咲いてて、みんなに見せようと思っていくつか摘んだんだけど、森から出たら全部枯れちゃったんだよ。ビックリした』
『森の中でかわいい白い花を見つけたから、家で栽培しようと掘り起こして、ビニール袋に入れて持ち帰ったら、干からびてたんです、カラカラに。ショックでした。どうしてだろう?』
『目的のピンクのフルーツを探すのが大変だった。一番乗りで森の中に入ったんだけど、全然見つけられなくて、変な植物はウヨウヨしてるし、同じところをグルグル回ったりして、でも、最終的に見つけられて優勝したし、領主様から直接ご褒美をもらえて、大満足だった』
「まさかとは思うけど……」表情を歪ませるラル。
『僕も、そうだと思います』俯くジェシー。
『いくつか決定的な言葉がありますので、ほぼ間違いないと思われます』
『さすが、優秀なジュリアス君ですな』お茶らけるシルビアだが『どうだ? こんなことをする奴に心当たりはあるか?』ラルとジェシーに聞く。
「その前に」止めるショウ。「心当たりがあると聞く理由を教えてほしい」




