27-3 週末のイベント
先に部屋へ戻ってきたのは、あとから行ったシルビアだった。
『早かったね。自分で仕掛けたわけじゃないのに、すぐ見つけられたのか?』
ジェシーが不思議そうにすると『渡した盗聴器が二つしかなかったからだよ。仕掛ける場所も指定したから、時間はかからなかった』ドカッとソファに座ると『なんだ? アイツ先に行ったのに、まだ戻ってきてねえのかよ』ショウの姿が見えないので、ため息を吐きながら面倒くさそうに言う。
「二ヶ所に複数個取り付けたから、人目を避けて回収するのに時間が掛かってるのよ」ラルが弁解すると『計画性がねえな。これだから、素人な人間さんは足を引っ張るんだよ』
「スイートルームしかない三階より宿泊者が多い二階のほうが、人目を避けるのが大変なことくらいわかるでしょう?」
ラルがムッとして反論すると、向かいのシルビアは真顔になって『この際だから言わせてもらいますが、あまり人間を信用したらダメですよ。特に、あなたのような立場の方はです。注意してください』
「彼が危険人物だというの?」
『ほら。そういう依存がダメなんですよ。ジェシー、お前の姉さんを救助したら、一緒に大陸からお連れしたほうがいい』
「私はキラのメンバーよ。大陸から出るわけに……」
『それは僕も考えてる』ジェシーがラルの言葉を遮って話しはじめる。『会ったばかりですが、ショウは思ったよりしっかりした考えの持ち主です。それは認めますが、なんといっても、人間であることがネックです』
「ジェシーまでそんなこと言うの?」ガッカリすると「私たちが人種差別するなと言ってるのに、その私たち側が同じことをしたらダメでしょう?」
『あなたや姉の場合は、人種差別ではありません。世界の安全保障の面から言ってるんです』
「それは……」
『ですから、今回僕は、シルビアの意見に付きます』
「ショウとパートナーを解消しろと?」
『……彼はあなたを、任務のパートナーとして見てませんよね?』
「……だから?」
『わかってるんでしたら、どうして一緒にいるんですか! 人間はダメだと言われてますよね!』
「……どうしてダメなの?」
『エッ?』
「どうして……人間はダメなの?」
『どうしてって、あなたの立場を考えてもらえばわかりますよね?』
「前に、エミアから、今を考えなければ未来はない。今を生き延びなければ、先の未来を考えて避ける意味がないでしょうって、言われたの」
『……それは、彼と別れようとしたことがある、ということですか?』
「……そうよ」
『まあ、あのエミア様が一目置く人間がいるとは思いませんでした』
『周りは必ず反対しますよ。それでも、一緒にいるつもりなんですか?』心配するシルビアに「……叔父様は、なにも言わないわよ」
『言わないだけで、考えていますよ』
「……そうね」




