25-3 誕生日パーティ
その後、しばらくして、笑いと拍手を独り占めにしたジュリアスのステージが終わった。
「思った以上に面白かったかも」反響をもらって満足顔のジュリアスを、不思議そうに見るラル。「堅物君だと思ってたけど、頭がいいから、面白いネタを思いつくのかな?」
『お笑い番組とか一切見ないのに、笑わせるツボを知ってるみたいで、うるさいわりに受けがいいんですよ』ジェシーも不思議に思っているとのこと。
『実は隠れて、動画なんか見て研究してるのかもな』冷やかすように言うシルビア。『外見は普通だから、笑いで受けてモテたいんじゃねえの?』
「男なら、モテたいと思うのは自然だろう?」ショウが言い返すと『あんたみてえな色男には、モテない男のみじめさなんか、わからないんじゃねえの?』
「ああ、わからないね。嫌味を言うことしかできない奴の気持なんか、サッパリ」
『言うじゃねえかよ』
『二人とも、さっき注意したばかりだろう? まったく、なにをはり合ってるんだ?』ため息を吐くジェシー。
「ショウも、どうしたの? いつものショウらしくないよ」
「別に。いつもと変わらねえよ」
「……言葉遣いが汚い」
「……そうか?」
取り分けた料理を食べ終わってメインのケーキを待っていると、急に店内の照明が暗くなり、ハッピーバースディの音楽が掛かると、奥の厨房に繋がる通路からから、シェインが待望のケーキをワゴンに乗せて店内に出てくる。
西洋の城のように三段になっている誕生日ケーキには生クリームとフルーツが花のように置かれ、大きなロウソクと小さなロウソクが城に建てられた旗のように配置されて、ラルたちがいる窓際の席まで、ゆっくりと店内を周って運ばれてくる。
その間、歓声を上げて写真を撮る者や、誕生日が近いのだろう、自分もここで誕生日会をやりたいと両親に頼み込む子供までいて、「こんなに楽しい誕生日会をやってくれるなら、頼んでみるか」と満足そうな顔をしている。
ワゴンがラルたちのテーブルの横で止まると『お待たせしました。メインイベントのケーキです』シェインともう一人のウエイター二人でケーキを持つと、テーブルの真ん中にゆっくりと置く。
『すごいな。食べきれるかな?』見たことのない大きさのケーキを前に、嬉しそうにプレートに書かれている文字や各段に置かれているフルーツを見て『食べきれないから、子供たちにも分けてあげてくれないかな』シェインに言うと『では、先に取り分けて、その後、子供たちに配りましょうか』
「ああ、その前に記念写真を撮らないと。ラルは動画を撮って」
「了解」携帯を取り出すと、ショウは写真を、ラルは動画を撮っていく。
すると、通路側に座っているシルビアが小声で『シェイン。さっき頼んだことはできそうか?』ケーキなんて、と言っていたのに、渡されたケーキに乗っている白桃をフォークに刺して食べながら聞くと『ひと晩待ってもらえますか。ちょっと時間が掛かりそうなので』切り分けながら答える。
『じゃあ明日、そっちの都合のいい時に声を掛けてくれ』
『わかりました』




