32-3 隠し事は
戻る途中「話は緊急のことだったのか?」
「エッ?」
「連絡事項」
「アッ、ええ」
「どんな事?」
「あんたはグループのメンバーじゃないのよ」
「彼らに関してのことだろう?」
「ノーコメント」
「新しく監禁場所がわかったとか?」
「ノーコメント」
「俺が代わりに調べる」
「ダメよ!」
「やっぱりな」
「アッ!」
「注意力が低下してるな。休んだほうがいい」
「休んでなんかいられないわ」
「今の状態では、ドジ踏んで捕まるのがオチだぞ。仲間に迷惑掛ける気か?」
「私がドジを踏むですって? ずいぶんと見くびられたものね」
「本当のことを言ったまでだ」
「捕まるようなドジは踏まないわ」
「他のことではドジ踏んでるのに?」
「……どういう意味?」
「バッグの底を見てみろ」と言われて慌てて見ると「これは!」
「話の内容は聞かせてもらった」ポケットからイヤホンを出す。
「盗聴器を仕掛けるなんて卑怯よ!」
「今さら何言ってんだよ。俺が盗聴器を持ってることくらい知ってるだろう?」
「それは……」
「だったら、内緒話をしに行くときは、気を付けるもんじゃないのか?」
俯くキラに「それとも、ワザと聞かせたのか?」意地悪く聞くと答えない。
本当に話の内容を聞いていたのか判断が付かないらしく、様子を伺っている。
「今さら用心しても遅いぞ。注意力と集中力が落ちてる証拠だ」
キラが持っている盗聴器を取ると「俺が調べる」ポケットにしまう。
「何度も言ってるでしょう? あんたはグループのメンバーじゃないのよ。首を突っ込まないで」
「部屋に監禁されたくなかったら、大人しくしてろ」
「私を監禁するですって? フフッ、やれるものならやってみなさいよ。できたら誉めてあげるわ」
思いもよらない強気なことを自信満々に言うキラに驚く。
駐車場に車を停め、借りているコテージに戻る途中「なぜ、そこまでして彼らのために動くんだ?」
「エッ?」驚く顔を向け「あんたの口からそんな言葉が出るなんて。本気で彼らを助けようと思ってないの?」
「そんなことない。ただ、お前の行動は度が行き過ぎてるから、気になった」
「それだけ、本気で彼らを助けたい気持ちがあるからよ」
「それでは身の破滅を呼ぶぞ」
「私一人が消えても、グループは残るわ」
「お前らのグループは、メンバーを使い捨ての商品のように扱ってるのか?」
「そんな事ないわ。みんな本気で助けたいと思ってるからよ」
「自分を犠牲にしてまで?」
「そんな事を言うあんたにはわからないわ」
「ああ、理解できないね。いくら助けてくれた相手が人間でも、命と引き換えに助けられたら嬉しくないだろう?」
「それは……」
「それとも、命を落として当然だと思ってると思うのか?」
「……」
「またダンマリかよ」




