24-3 新たな局面
三階の右端にあるスイートルームに戻ると「夕飯の時間まで横になってろよ」
「……うん」隣の寝室へ行くとパジャマ代わりのスウェットに着替え、ベッドに横になる。
「入っていいか?」ショウがノックして声を掛けるので「うん、大丈夫」
ベッドに横になっているラルを見ると「ちょっと頑張りすぎたな。夕飯はここで取るか?」
「でも、ジェシーの誕生日パーティを予約したんでしょう?」
「ああ、そうだったな」ベッド脇の椅子に座ると「だからといって、無理に動く必要はないぞ」
「ジェシーは、姉弟のいない私にとって、弟同然なの」
「……わかってる。ジェシーも、お前のことを、もう一人の姉と思ってるようだからな」
「……そう」嬉しそうに、照れ笑いをする。
「ラル」改めて声を掛けるショウ。「今回のオルト追跡の件だが、ジェシーたちに任せようと思ってる」
「……どういう意味?」意外なことを言われて動揺すると「なぜ俺たちがここにいるか、わかってるか?」
「……それは……」思い出すラルが「こういう流れできてるからには、外れたらいけないと思う」
「それは俺も感じてるが、だからといって、その流れに沿う必要はないと思う」
「……じゃあ、どうしろというの?」
「俺たちは、ここの看護師さんの厚意でルナノヴァへ行くことにしてる。だから、ジェシーたちの行動をサポートする……」と言って言葉を切ると「……無理だな」ラルの真剣な表情を見て「こんな皮肉な状況を作った奴を呪うぞ」
「前から言ってるけど、私が置かれてる状況をおかしいといって止めるなら、一緒に行動することは……」
「ジェシーから」と言ってラルの言葉を止めると「ジェシーから、彼の姉同様、ラルも王国から出ることはなかったと言ってた」
「……そう」
「シンシアも、本来なら、シルバーフェニックス王国から出ることはない立場にいるんだとわかった」
「……だから?」
「ジェシーが俺にそんなことを言うからには、お前をルナノヴァへ連れてくるなと、言ってるように聞こえた」
「……ジェシーは、なにか起きたとき、自分が犠牲になると考えてる」
「……そういうことか!」頭を抱えるショウ。「だから、あえて俺にそんなことを言ったのか!」
「ジェシーは、私たちが置かれてる立場を理解してるから、自分を犠牲にすることを……本来の…使命だと………」
「お前たちが置かれてる立場とはなんだ! そんな不安定な立場に立たせる仕組みを、お前たちは容認してきたのか!」
「……そのことは、父様が話してくれた。遠い昔、人間が私たちとの共存を離れて独立を宣言したとき、いずれ訪れるであろう最悪の事態に備えて、体制を整えておく必要があるからだと」
「そんな昔から、最悪の事態が起こる可能性があることを予測して、備えていたというのか?」
「そうよ。こういう事態になることはわからなかったけど、いずれ人間は滅びの道を進むことになるとわかってたから、私たちは、少しでもその時期を遅らせる努力をしてきたの」
「……なんで、なんで醜い人間が起こした事態を、もっと早くに潰さなかったんだ? できただろう?」
「人間が滅んだら、私たちの存在意義がなくなるからよ」
「なんだって!」
「そうなったら、私たちは消滅するから……」
頭を抱えるショウに「でも、まだ再生のチャンスが残されてる」
「どこに!」
「あなたやアディたち、PFSなどの保護団体が私たちを守ってくれてるから……」




