24-1 新たな局面
二人はその場所で足音が遠ざかっていくのを確認すると「ジェシーの部屋に戻るぞ」
踵を返して廊下を速足で戻ると、ドアをノックする。
少しして『はい』ドア越しにジェシーが返事をするので「俺だ。開けてくれ」
すぐにドアが開き『忘れものですか?』と言っている横を通って、部屋に入るとドアを閉める。
『どうしたんですか?』驚くジェシーに「話があるの」彼の腕をつかんでソファへ連れていくと「オルトの代理人の女性もカムフラージュだ」ソファ横でジェシーと向かい合うショウが、先ほど聞いた電話の内容を話すと『本当ですか!』大きな声を出すので「シッ」
『アッ、すみません。では、今いる四人は、本当に代理人なんですね?』
「ああ、そうなるな」
今回ばかりは、マイペースのジュリアスも手を止めて話を聞いている。
「彼女は見かけどおりの年じゃないと思う」
「なぜそう思うんだ?」
「話し声のトーンが落ち着いてたし、報告内容も無駄がなかった。若く見える外見は作り込んだんでしょうね。だから、どうしてあんな重要な内容の電話を、聞かれるかもしれない階段脇のところで話してたのかが気になる」
「それは、俺も言おうと思ってたところだ。まるで、誰かに聞いてほしいように……聞かせるようにワザとか」
「誰に聞かせるつもりだったのかしら?」
「二階という場所から、最初に思いつくのはジェシーたちだ。電話の内容にも出てきたし、しかもなにか企んでる。このまま付いてこさせたいのか、付いてこさせて拘束し、なにかを聞きだそうとしてるのか?」
「まだそこは予測しかできないから、これからの出方を見るしかないわね」
「そうだな。さて、どうする?」ジェシーを見ると『あとで、あの近辺に盗聴器を仕掛けておきます。なにか企みがあるのであれば、あの場所で、また電話を掛ける可能性があるので』
「それなら、俺が仕掛けておく」
『でも、盗聴器なんか持ってないでしょう?』
「なかったら自分で作るから、心配ないわよ」
『作る? 盗聴器を?』意味が分からず、首を傾げる。
「ああ、いくらでも作ってやるよ」ふてくされるように言うので『……本当ですか?』眉唾なジェシー。
「しかも、盗聴器を仕掛けるのも録音もお手のものだから、任せて大丈夫よ」と言うラルの顔を見て『わかりました。お願いします』ショウを見ると「まだ根に持ってるのかよ」と呟くので「……持つ」と呟き返す。
『過去になにがあったのか、容易に想像が付きますが、ここでケンカはしないようにお願いします』ジェシーが静かに窘めると『「夫婦ゲンカは犬も食わぬ」と人間は言うそうですね』キーを叩きだすジュリアスが冷静な口調で言うので、
「夫婦じゃないよ!」
「まだ結婚してないんだ」




