28-1 オルトの正体
「娘に身代を譲るために、自分の代わりを体験させてるのか。残りの二名の代理人は、彼女のボディガードというところか」
『そうです』
「ジェシーたちも、若いオルトが影武者だと気付いたんでしょう?」
『そうですね。違和感がありましたが、最初は気付きませんでした』
「そうなんだ。じゃあ、どこで気付いたの?」
『シルビアが喫煙所で運転手の顔を見たときです。代理人の彼女によく似てると言ってきて、これは何かあると調べはじめたんですよ』
「喫煙所って、謎解きの場所でもあるのね」
「オルトは写真すらない、姿を見せない領主として謎の人物扱いされてるが、なぜ表舞台に出てこないか、わかってるのか?」
『調べました。彼の性格にあるようです。極度のあがり症で、対面での会話が難しいようです。なので、身分がバレないようにお付きの運転手として同行して、別室で、サングラスに付いているモニターと襟に付けているマイクを通して聞こえてくる会話を元に、マイクを通して本人が返事をするというシステムを取ってるようです』
「本人が答えてるの? じゃあ、影武者は口パクで合わせてると?」
『気管が弱いとかで、マスクを付けてるときが多いみたいです』
「安直すぎる気がする……」そんなことが見抜けないのだろうかと悩むラル。
「しかし、よくそこまで調べられたな」ショウが不思議に思うと『一度あたりを付けてしまえば、行動を観察すると、変な動きをしてるな、とわかってくるんです』
「やっぱり、あの指輪は意味があったね」ショウに言うと「そうだな。オルトの側近たちは娘の顔を知ってるだろうし、あの指輪は父親の代理の意味があるんだろう」
『娘が左手の人差し指にしてるブランドの指輪ですか?』
「そう。有名店のオーダーメイドみたいね」
『ああ、そうらしいですけど、よくご存じですね』
「身近な人が持ってるらしいわ」
「まあな」
『ショウはお金持ちなんですね』
「俺じゃない。親がだ」
『……そうなんですか』ショウの言い方になにかを察したようで、話を変える。『これからの行動ですが、僕たちはこのままオルト一行と一緒にルナノヴァへ行き、経済状況を調べることになってます。ショウたちはどんな予定ですか?』
「実は、俺たちもルナノヴァへ行く予定なんだ」
ラルの脚の傷を消す治療を受けるために、このホテルに詰めている看護師の紹介で行くことを話すと『たぶん、グランチェストも一緒に移動することになるでしょうね』
「オルトがグランチェストに、家族旅行と称して来るように言ったのかもしれないな」
『その可能性はありますね。オルトの船は一度も摘発を受けたことがないので、新たになにかを計画しはじめて、そのために呼んだというのが、表向きの理由かもしれません』




