32-2 隠し事は
キラが中へ入ってから一時間近く経つが、一向に出てくる気配がない。
「もうすぐ閉園時間だぞ」
しびれを切らして車から出ると、入り口に向かった。
受付で止められたが、中に連れがいると話したら入れてくれたので、一つずつ温室内を見ていく。
そして、三つ目の温室に入ったとき、奥から話し声が聞こえてきた。
一人はキラだが、もう一人は聞き覚えのない男の声。
(もしかして、グループの奴か?)
声のするほうへ足音を忍ばせて近付いていくと、突然、話し声が途絶えた。
(バレたか?)
何気ない顔をして角を曲がると、キラが一人で立っている。
「ショウ! 待っててと言ったじゃないの!」
「遅いんだよ」歩いていくと「そんなに経った?」腕時計を見る。
「話し相手はどこへ行ったんだ?」
「エッ?」
「男と話してただろう?」
「聞いてたの!」
「何を話してたのかわからなかったけど」
「そう……もう行っちゃったわ」
「誰なんだ?」
「誰でもいいでしょう」
「グループの奴か?」
「……まあね」
「あれ? その鳥、昨日会ったオウムじゃないか」
目の高さに張り出した枝にとまっている。
「気に入られちゃったみたい」
「で、話ってのは?」
「……どんな話だっていいでしょう?」
「次のターゲットのことか?」
「エッ?」
「アタリ?」
「違うわ。連絡事項よ」
「そんなの、メールですればいいじゃないか」
「たまたまここに来てたから、直接聞いたのよ」
「ああ、アレンのデータを警察に届けに来たのか」
「……ええ」
その時、マイクを通して音楽が流れてきた。
“本日は、ご来園くださいまして誠にありがとうございます。当園は、午後五時を持ちまして閉館とさせていただきます。またのご来園を心からお待ち致しております”
アナウンスが入るので「出ましょう」出口へ向かって歩きだす。
メインの出入り口では、係りの人が出てくる客一人ずつに挨拶をしていた。
車のところまで戻ると、やっぱり花の匂いが全身に付いている。
「花になった気分だな」
「コロンを付けたと思えばいいじゃないの」
「強烈過ぎるよ」服を叩いて香りを飛ばし、車に乗り込むと「これからどうする?」
「コテージに戻るわ。やらないといけない事ができたから。入り口まで乗せてくれれば、一人で戻るわ」
「俺も戻るよ」
「ビーチで泳いでくればいいじゃない。せっかく来たんだから」
「こんな時間から?」
「……遅過ぎるわね」




