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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第七章 休息の計画
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24-3 雲行きが怪しくなる

 

 しばらくして、注文を取りにきたウエイターがラルの料理を運んできてテーブルに置くと「デザートは食後にお持ちします」と言うので「申し訳ないけど、デザートは部屋に運んでくれないか?」ショウが話しかける。


「お部屋にでございますか?」ウエイターが怪訝そうな顔をするので「俺たちが引き上げたあと、十分くらいしたら彼女の部屋に持ってきてほしいんだ。そのほうが、彼女が体調を気にせず、ゆっくり食べられるからね」


「ああ、そうですね。まだ体調が回復されていらっしゃらないんでした。承知いたしました。食後のお茶と一緒にお持ちするよう、ルームサービスへ手配しておきます」


「忙しいのに、すみません」ラルが声を掛けると「お客様がお気になさることはないんですよ。ゆっくり、食後のお茶とデザートをご堪能ください」ラルに笑顔で答えると、一礼して戻っていく。


(効果ありすぎて、予測以上の事態が起きてる。まずいな。しばらくの間、部屋から出ないようにするか)


 自分の存在をほぼ無視してラルに声を掛けていたウエイターの態度に、今後の展開が脳裏に浮かぶので、早々に対応したほうがよさそうだと思い、先の予定を考えはじめる。


(オルトを呼ぶように手配した手前、天気が回復したら、すぐに出発するわけにいかなくなったからな……)


 考え込むショウの目に、料理に手を付けないラルが映ると「どうした。冷める前に食べろよ」

「ショウの分が来てから食べる」


「俺のはすぐに来る。それに、俺のほうが先に食べ終わるから、気にするな」

「……うん」ゆっくりフォークを持つと食べはじめる。


 その後、ショウが頼んだ「Bランチ」が来るとラルのスピードに合わせて食べ、ラルが残した分を食べると席を立つ。


 会計を済ませ、ダイニングルームから出ようとすると会計を担当したウエイターが「またお越しください」と笑顔でラルに声を掛けるので「はい。また……」と言うラルの返事を遮り「考えとく」ショウが割り込み、連れて出る。


 玄関前のフロントまで来ると「朝食はいかがでしたか?」先ほど、ラルを見て騒いでいたクラークの一人が、フロントからにこやかに声を掛けてくるので「はい。おいしくいただきました」笑顔を返すラルを見て、ショウが自分の右側へラルを移動させると「その笑顔をほかの男に向けるなと、さっき言っただろう!」


「アッ、エッ?」驚いてショウを見上げ「ホテルの人が、気を遣って声を掛けてくれたから……」

「ホテルの従業員の前に、男だ」


「……そうかもしれないけど……」

「目を付けられたら、なにをするかわからないだろう?」


「でも、ホテルの人だよ?」

「だから、ホテルの従業員の前に、野郎だろう?」

「……野郎って……」


 嫉妬心丸出しなのは十分にわかっているが、自分の知らない間に手を出される恐れと、体調が万全でないため、ひょんなことから正体がバレでもしたら一大事なので、警戒心もレベルアップしている。


「興味を持たれるような行動や態度は取るな」

「……興味って……」


 ショウの言動が理解できないラルは、困った顔をしながらショウに連れられて階段を上がっていく。


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