24-2 雲行きが怪しくなる
「なに、席は用意させるから、気にすることはないよ」にこやかに返してくるグランチェストに「ですが、店内は満席に近いですし、忙しいウエイターさんの手を煩わせるのは申し訳ないですから」
「フム、それもそうだね。では、食後のお茶を一緒にどうかね? おいしいケーキをご馳走させてくれないか?」にこやかにラルに提案しはじめる。
すると「あなた」予約席のところにいるグランチェスト夫人が、ショウを食事に誘っているのだと思い、娘のフレンティーヌと一緒にくると
「またお会いできて嬉しいわ。こちらの席で一緒にいかが?」ショウの隣に立って声を掛けると「そうですわ。わたくし、もっとお話しを伺いたいわ」母親の隣に立つフレンティーヌが「もちろんあなたもご一緒に……」向かいに座っているラルに、上から目線の言い方をして視線を向けると「エッ!」一瞬、誰なのか理解できず固まる。
「せっかくのお誘いですが、先ほどグランチェスト氏にも、予約席は四人掛けなので、今回は遠慮させていただくとお話ししたところです」驚く顔で固まっている女性二人に説明すると「エッ? あ、ああ、そうですわね。では、次の機会のときにご一緒しましょう」かろうじて返事をする夫人。
娘のフレンティーヌは、ラルを見たまま、言葉が出ない。
「では、食後にカフェで待ってるよ」懲りずにラルに声を掛けてくるグランチェスト氏に「すみません。まだ体調が万全ではないので、食後は部屋に戻ってお茶を飲む予定なんです。すでにルームサービスを頼んでるので、体調が良くなりましたらお声がけいただけますか?」代わりに答えるショウが、丁寧に、しかし確実に断る。
「ルームサービスを頼んでるの?」とラルが聞くので「シッ」
「……」
「では明日、一緒に昼食をどうかな?」またラルに聞くので「そうですわ。今度は全員が座れるように予約するので、ぜひ、ご一緒に昼食をいただきましょう」気を取りなおす夫人。
「今日は彼女の体調が良かったので、お昼をダイニングで食べることにしただけなんです。なので、続けては控えようと思っているので」
来たとき、体調が良くないと聞いていたにも拘らず無理に部屋を交代させたことで、自分たちの印象が良く思われていないことがわかっていただけに、修復しようとするグランチェストは
「それでは、三日後なら大丈夫だろう。昼食の予約を入れておくよ。君の分はちゃんとシェフに伝えておくから、心配しなくて大丈夫だよ」ラルに伝えると「では三日後に」返事を聞かずに自分たちの席へ戻っていくので「ちょっと!」ショウが止めるが、彼らは足を止めることなく歩いていく。
(なんか、雲行きが怪しくなってる気がするぞ)イヤな予感がするショウ。(まさか、グランチェスト氏がラルに興味を持つとは思わなかった)
向かいのラルはなにが起きているのかわからず、呆気に取られている。
(夫人と娘もラルを見て驚いてたから、なにか仕掛けてくるかもしれない。まいったな。あの一家には注意しないと危ねえぞ)




