32-1 隠し事は
午後三時前になって、キラが部屋から出てきた。
「ああ、よく寝た」
「部屋の鍵、掛けるの忘れただろう」居間で本を読んでいるショウが声を掛けると「そういえば……」しまった、という顔をするので「用心深いお前らしくないな」
「中に入ったの?」
「入るわけないだろう」
「そう。お腹空いたわ」
「冷蔵庫にサンドイッチが入ってる」と言うとキッチンへ行き、アイスティーを入れて戻ってくる。
ソファに座り、食べながら「この前行った亜熱帯植物園て、何時まで開いてたっけ?」
「確か、午後五時までだったはず」
「五時? じゃあ、急いで行かないと間に合わない」サンドイッチを頬張る。
「行くところがあるって、あの植物園なのか?」
「まあね」
「そんなにガッツかないで、ゆっくり食えよ」
「間に合わなかったら困るのよ」
「そういえば、アレンが逮捕されたと、さっきテレビのニュースで言ってたぞ」
「……そう」
「これで、今回の仕事は終了だな」
「そうね」アイスティーを一気に飲んで部屋へ戻る。
「慌しい奴だな」
バッグを持って出てきたキラに「そんなに慌てなくても間に合うだろう?」
「どのくらい時間が掛かるかわからないから、閉園時間がきたら困るわ」
「すぐ済むんじゃなかったのか?」
「アッ!」ヤバい、という顔をするので「まだ何か隠してるな?」
睨み付けるショウ。知らん振りのキラ。
その亜熱帯植物園には午後三時五十分に着いた。
「ここで待ってて」車が停まると、出ようとするショウを止める。
「なんで待ってないといけないんだ?」
「いいから、待ってて」
「イヤだと言ったら?」
「お願いだから、待ってて」
「……わかった」渋々ドアを閉めると「なるべく早く戻ってくるから」車から出ると、入り口へ向かって走っていく。
「出てくるまで、何をして時間を潰せばいいんだよ」
暇なのでラジオを点けると、アレン逮捕の続報をやっていた。
温室内に閉じ込められていたと思われるシルバーフェニックスたちは見当たらず、別荘の地下が爆破されていたこと。
通報してきたのが誰なのか、彼らを監禁していたデータを送り付けてきたのも誰なのかわからないことなどを、繰り返し話している。
その後ショウは、後部座席に置いてあるバッグからノートブックを取り出すと、イヤホンを付ける。




