23-2 慣れない買いもの
お昼前にホテルに戻ってきたショウがラルの部屋に行くと、ラルは約束を守ってベッドで寝ていた。
ショウは買ってきた服が入った紙袋をソファに置くと、ラルを起こさないようにノートPCを持って隣のリビングへ行き、ソファ前のテーブルにPCを置くと、室内電話で昼食のルームサービスを頼む。
その後、メールをチェックしてグループに、イータル ヴェンティに、滞在しているホテルにオルトが来るように誘導するよう、依頼した旨を連絡した。
しばらくしてルームサービスが昼食を運んできたのでラルを起こし、長テーブルをセッティングすると「どうだった? エミアたち、引き受けてくれた?」寝ぼけた声で聞いてくる。
「ああ。アウラリートレとアウラマリスが引き受けてくれたよ。手土産に途中のスーパーで買ったケーキを渡したら、嬉しそうに持ってった」
「そうなんだ。うまく誘導してくれるといいけど」
「対岸にいるジェシーが協力してくれるらしいから、大丈夫だろう」
「ジェシーが? じゃあ、向こうで取れた情報ももらえそうだね」
「そうだな。あともう一つ、面白いことがあったぞ」
フレンティーヌのボディガードの一人が尾行してきたので、少し揶揄ったら、パニクッて戻っていったことを話すと「そんなことして大丈夫なの?」と言いつつ、厳ついボディガードが理解できない光景を目撃して、目を丸くしているところを想像してしまい、クスクス笑う。「私も見てみたかったかも」
「ワザと車を隣に付けて、なにしてんだ? と声を掛けたら、言い訳にもならないことを言って、そそくさと戻ってったよ。お嬢様になんて報告するんだろうな」
笑いながら昼食を長テーブルに置いていくと向かいに座り「いただきます」食べはじめる。
「ショウを敵に回すと、いいように振り回されるから気を付けないとね」
「人のことを尾行するほうが悪い」
「次はどんな手で来るかな?」
「奴の顔は覚えたから、もう一人のボディガードが来るだろうな」
「ああ、そうだね」ラルも話を聞きながらフォークを動かし「また揶揄って困惑させるんでしょう?」
「次はもう少しショッキングなことにするかな?」
「次はウィルシーにでも頼むの?」
「ああ、そうだな」と言いつつ、頭の中で楽しい作戦を考える。
食後、薬を飲んでノンカフェインのお茶を飲んでいると、ショウがソファに置いた紙袋を持ってきてラルに渡し「気に入るといいけど」
「これなに?」
「開けてみな」
ガサガサと中身を取りだすと「服?」ベビーピンクのカットソーを広げる。
「サイズがちょっと心配だけど、店員のお姉さんに手伝ってもらったから、たぶん大丈夫だと思う。合わなかったら交換してくれるらしいから、着てみろよ」そう言って隣のリビングへ行く。
少しして「着たか?」と声を掛けると「着た」と返ってくるので寝室に入ると、ベッドに腰掛けていた。
「どう?」
「せっかくだから、下も着替えてみろよ」
「……うん」スウェットのパンツなのでチグハグに見える。
再び隣のリビングへ行き、呼ばれて寝室へ行くと、Gパンにベビーピンクのカットソーを着て立っていた。




