22-1 それぞれの目的
翌日、だいぶ雨の降りが落ち着いてきたが、暑い場所のため湿度が高く、一日中、除湿を掛けている。
「電気代がかなりかかりそうだね」ラルがリモコンで温度調整していると「この国は向かいの都市から電力の供給を受けてるから、他より電気料金が安いらしい」ベッド脇のテーブルでメールをチェックしているショウ。
「向かいの都市って、オルトが滞在してるスペ・シン・フトゥルム?」
「そうだ。地下ケーブルで繋がれてるらしい」
「じゃあ、こっちの大陸に戻るとき、このホテルに泊まるかな?」
「それはないだろう。ここからオルトの領地であるルナノヴァまで、車で六時間弱。ヘリならもっと早いぞ」
「そうだよね。じゃあ、エミアたちに頼んで、泊まるように仕向けてもらうとか?」
「ああ、それ、いいかもしれないな。またアウラリートレやアウラマリスに細工してもらって、俺たちもルナノヴァに行く予定だからとここで話すキッカケが作れたら、有利に行動できる」
「うまくいったらだけどね」
「うまくいかせるさ。じゃあ、俺は朝飯食べたらエミアに話を付けにいってくるから、ラルは薬を飲んでしっかり休んどけよ。誘導してオルトたちが来ることになったのに、体調が悪くて動けなかった、なんてことになったら、せっかくのチャンスを逃してしまうからな」
「そうだよね。ちゃんと休んで、早く動けるようにする」
その後、いつものように長テーブルをベッドに持ってきて、PCでネットニュースを見ると、オルトの代理人と市長の会食で、どんなことが話題になったのか、ワイドショーの映像が流れた。
話の内容はこれといって収穫になることはないが、会食に出席した市長側のメンバーの映像がでてきたので「市長側のメンバーの調査も、アディとグループに依頼しよう」
食後、ラルが薬を飲んだことを確認してショウは部屋から出ると、フロントで傘を借りて駐車場の端に置いてあるレンタカーに乗り、ウィルシーたちがいる湖へ向かった。
駐車場から出ていくショウの車を、一階カフェの窓際に座っているフレンティーヌが見ていて、なにかを思いついたらしく、後ろに控えている二人のボディーガードのうち、片方を呼ぶと何やら指示をする。
ボディガードは「すぐに」と返事をしてカフェから出ていき、いつの間にか借りていたレンタカーに乗り込むと、ショウの後を追うように駐車場から出ていく。
「残念ですけど、わたくしは欲しいものを諦めたことがないの」
残ったボディガードにも何やら指示をすると、一礼してこちらもカフェから出ていくと階段下のフロントへ行き、なにやらマネージャーと話をしはじめる。
少しして、カフェで一人お茶を飲むフレンティーヌのところに父親が来て向かいに座り、注文を済ますと「雨続きで退屈してないか?」
「いいえ、お父様。追いかける目的ができて、楽しいですわ」
「ハハハハハッ、追いかける目的か。それはいいことだ」
「お父様も楽しそうだわ」
「ああ、私も捜してたものを見つけたからね。どうやって手に入れようか、作戦を考えるのは楽しいよ」




