21-2 約束
「ラル、聞いてるか?」
「約束、できない」
「なんで?」
「だって、これからどんなことが起こるかわからないんだよ。一人で行動しなきゃいけないことが起こる可能性が、少なくともあるでしょう?」
「確かにな。だったら、そうなったときのために、連絡方法を決めておけばいいことだ」
「連絡方法?」
「ラルの言うとおり、一人で行動することになる可能性はゼロじゃない。だから、万一、一人で動かなければならなくなったときに連絡する方法を決めておけば、最悪の結果になる前に回避することができる」
「どうすることもできない状況だってあるでしょう?」
「あるかもしれないが、無理だと諦めたら、どんな状況でも同じだろう?」
「……そうかも、しれないけど」
「けどじゃなくて、そうだ!」
すると、ふてくされる顔をするので「とにかく、隠し事はしない。約束だぞ」
「……ん……」
「約束だぞ! 返事は?」
「……わかった!」ぶっきらぼうでも返事をするので「それじゃ、薬を用意しておくから、スウェットに着替えてこい」
しぶしぶ立ち上がると、隣の寝室へ行くラルが着替えを持ってお風呂場へ向かうので、ショウはあとから寝室へ入り、ラルが飲む薬を用意すると、ベッド横のテーブルに置いてあるPCの電源を入れてメールをチェックする。
しばらくして、ラルが着替えて戻ってくるとベッドに入り、サイドテーブルに置いてある薬を飲んで横になると「なにか連絡が来てるの?」ショウがPCのモニターをずっと見ているので、声を掛ける。
「ネットニュースに、オルトの続報が出てるんだ」
「本当! どんなこと!」
「先日、滞在地の市長との会食が、オルトが滞在してるホテルのレストランを貸し切って催されたが、暴風雨による気温低下で体調を崩してしまい、結局オルトは姿を現すことはなく、代理人数名が代わりに出席したそうだ」
「やっぱり表に出てこないね。本当に実在するのかな? かなり怪しいよね」
「同じホテルに泊まってる客の数名が、オルトらしき人物を目撃してることは確かだが、その人物がオルトと判明したわけじゃないからな」
「数名の代理人が代わりに市長との会食に出席したらしいけど、その代理人にオルトが混じってた可能性はある?」
「ああ、面白いところに気が付くな。出席した代理人の情報があるか調べてみよう」
「代理人は何名で、それぞれどんな風貌なのかわかれば、あとで素性を調べられるよ」
「そうだな。もしラルが言うように代理人として会食に出席したとしたら、奴の目的はなんだ?」キーを叩きながら聞くと「正体を隠してまで出席する理由ってことでしょう?」ラルも考える。
「まあな。となると、市長クラスが持ってる極秘情報あたりか?」
「そうかもね。自分がいる大陸の向かいにある大きな港街だから、なにかの足掛かりにする可能性もあるし」
「会食の時、どんな話が出たのかわかるといいんだが」
「議事録を取るために、秘書か付き人が記録を取ってるか録音してると思うから、市長側の秘書とか調べると手に入るかも」




