31 全部見付けた
しばらくして、シャワーを浴びにキラが部屋から出てきた。
ショウは冷蔵庫からビールを持ってくると、出てきたキラに「飲まないか?」声を掛けるとブスッとした顔をして立ち止まるので「座れよ」風呂上がりの一杯の誘惑には勝てないらしく、黙って向かいに座る。
キラのグラスにビールを注ぎながら「アレンの別荘にでも行ってきたのか?」と聞くと「エッ?」
「当たり?」
「違うわ」
「じゃあ、どこへ行ってきたんだよ」
「もう、しつこいわね」
「単独行動は危険だと言っただろう?」
「……わかったわよ。言えばいいんでしょう。この中を一周してきたのよ」
「本当か?」
「信じる信じないはそっちの勝手」
「……わかった」追及するのをやめてキラの前にグラスを置き「では、今回の仕事の成功を祝って」グラスを前に出すと「まだ終わってないわ」
「九分九厘終わったじゃないか」
「それはそうだけど」
「お疲れ様」
ビールを一気に飲むショウを見て、キラもグラスに口を付ける。
「クーッ! うまい!」
「この味を覚えたら、止められないわね」
「ビールを考えた人に感謝するよ」
「もう一杯ちょうだい」
「程々にしとけ。この前みたいになるぞ」
「大丈夫よ」
その後、二本あけるとそれぞれの部屋へ戻った。
翌朝九時に目覚めたショウは着替えて顔を洗うと、キラの部屋をノックする。
「キラ、起きてるか?」
声を掛けるが、返事がない。
「キラ? キラ!」
強くノックするが、やっぱり返事がない。
「まさかあいつ、一人で出掛けたのか?」
その時、寝惚けた顔のキラが出てきて「何よォ、煩いなァ」だるそうに文句を言う。
「……もう九時だぞ」
「九時?」
「その格好で寝てたのか?」
「エッ?」昨日着ていた服のままなので「あれ? 着替えなかったっけ?」
ショウが部屋を覗くと、荷物がものの見事に散らかっていた。
(どうやったらここまで散らかせるんだ?)呆気に取られながらも「ベッドで寝なかったのか?」と聞くと振り返り「……ソファで寝てた」
まあ、寝られるはずはないだろう。ベッドの上は荷物が寝ているのだから。
「こんなに散らかして、何してたんだ?」
「アッ、そうだ。発信機を見付けたんだ」思い出し、テーブルにある数個の発信機を指す。
「もしかして、一晩中探してたのか?」
「カバンの内ポケットの中に貼り付けてあるなんて、思いもしなかった」
「それで中身が散らばってるのか」
「こんなに発信機を付けるなんて、ひどいじゃないの」
「仕方ないだろう。会うたびに違うバッグを持ってるんだから」
「フワアアアア」
「ベッドの上を片付けて、もう少し寝ろ」
「でも、今日は出掛けないといけないから」と言いつつ、眠そうに目を擦る。
「今日中に行けばいいんだろう?」
「そうだけど……」
「午前中は寝てても大丈夫だろう?」
「……たぶん」
「じゃあ片付けろ」
床に落ちている小物類を拾いだすが、下着類はさすがに手が付けられない。
「俺が触れないものを片付けろ!」
大方片付いたところで「ちゃんと着替えて寝ろよ」声を掛けると部屋から出て、その足で外へ出ると昨日行ったレストランへ行き、サンドイッチを作ってもらった。
コテージに戻ってくると「あいつ、ちゃんとベッドで寝たか?」心配になってドアノブを回すと、鍵が掛かっていない。
「何やってんだ? 無用心だな」
ソッと中を覗くとちゃんとベッドで寝ていたので居間へ戻り、紅茶を入れてソファに座ると「こんなに発信機を付けるなんてひどいじゃないの、か」眠そうな顔で怒るキラの顔を思い出しつつ、サンドイッチを食べはじめる。




