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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第七章 休息の計画
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20-2 心の中の消えない傷

 

「……だから、こうして一緒にいられればいい」

「なぜ俺なんだ?」


「なぜって」

「なぜ俺でいいんだ? なぜ、お前にあんなひどいことをした俺でいいんだ?」

「それは……」


「お前の正体を知ってるからか? グループのことを知ってるからか?」

「……」


「そこまで話すほど、なんで俺を信用したんだ?」

「……」


「俺は、お前が心の底から嫌ってる人間なんだぞ」

「それは……」


「俺は、お前にとって、どういう場所にいるんだ?」

「どういう場所?」


「今、俺たちは向かい合ってソファに座ってる。これだけの距離が俺とお前の間にある。まだこれだけ離れてるんだ。これで傍にいると言えるのか? この距離が、お前の言う、傍にいてくれるだけでいい距離なのか?」


 さらにラルが困った顔をすると「どうなんだ?」と聞いてくるので「脚のケガが大分良くなった後、湖に行って、エミアたちに基地から出ていくことを話した。ショウが、私のあとを付けてきたときのこと」


「やっぱり、そのことを言いに行ったのか」


「私は一人で基地から出ていこうと思ってた。そう彼女たちに話した。その時に言われたの。今を考えなければ先はない。今現在、どうすればいいのか考えるべきだ。今、誰に傍にいてほしいのか。誰に傍にいてもらいたいのか。まずはそれを考えろと」


「それから?」

「それから、ショウは、私にとって、貴重な存在だと言われた」

「……そうか」


「その日の夜、これらのことについて考えた。でも、なにひとつ答えが出なかった。


 今を考えなければ先がない。今の私にはなにを考えたらいいのかすらわからない。

 今現在、どうすればいいのか。最初になにをやったらいいのかわからない。


 今、誰に傍にいてほしいのか。誰に傍にいてもらいたいのか。誰が私にとって傍にいてくれたらいいのかわからない。


 なにもわからないの。ショウは、私にとって貴重な存在だと言われた。でも、貴重な存在ってどういうこと? どうして貴重な存在なの?」


「今、お前が考えなければならないのは、心の中のことを話せる存在が傍にいるか。

 今現在どうすればいいのか。その存在を見つけること。


 今、誰に傍にいてほしいのか。誰に傍にいてもらいたいのか。

 言い換えれば、お前が寂しいときや苦しいとき、誰に傍にいてほしいのかということ。


 誰か浮かんだか?」


「……」

「いなかったのか?」


「そのことをエミアに聞かれたとき……ショウの顔が、浮かんだ……」

「なぜ?」


「……わからない。わからないけど、ショウの顔しか、浮かばなかった」

「そうか……これで、安心してお前の傍にいられるよ」

「なんで? 私ちゃんと答えてない」


「誰に傍にいてほしいのかと聞かれたとき、俺の顔が浮かんだという言葉だけで十分だ」

「なんで?」


「俺も、お前の傍にいたいから」

「……」


「今ある俺たちの間のこの距離は、埋められる」

「……」


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