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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第七章 休息の計画
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19-5 ショウの家族

 

「大学時代、ずっといなかったわけじゃないでしょう? それだけの顔と身長を持ってて頭がいいんだもの、周りの女性がホッとかなかったでしょう?」


「そんなこと聞いてどうするんだよ」


「ショウだって私に聞いたじゃないの。付き合ってた奴はいなかったのかって」

「……ああ、そうだったな」


「私はちゃんと答えたわよ」

「憧れてる奴がいるってね」

「そう」


「……付き合ってた子はいたよ。でも、長続きしなかった」

「なんで?」


「いろいろとね」

「フウン。どんな人だったの?」


「そんな事まで聞くのかよ」

「私には聞いといて、自分は言えないの?」


「……素直でかわいい子だったよ。取り立てて目立つタイプじゃなかったけど、心の優しい子だった」


「付き合うキッカケはなんだったの?」

「そこまで話さないといけないのかよ」

「だって、想像してた人と全然タイプが違うんだもん」


「……遊び仲間の友達全員、中学からサッカーやってて、大学でもサッカーやってたんだ。ある日、練習が終わって、その日は珍しくみんな用事があってバラバラに帰ったんだ。いつものように兄貴の家に向かってたんだけど、途中にある孤児院の前を通りかかったとき、大勢の子供の声が聞こえてきたから中を覗くと、彼女が子供たちと一緒に遊んでたんだ」


「それが出会いだったの?」


「いや、彼女は俺たちが練習してるのをよく見に来てたんだよ。だから知ってたんだ」

「取り巻きの一人だったのね」


「いや。ただ練習を見に来てただけだよ」

「そうなの?」


「いつも他に練習を見にきてる女性たちの隅に隠れるようにいてさ。大人しいから、逆に目立って顔を覚えてたんだ」


「なんとなくわかる」


「それから、その孤児院の前を通るたびに庭をのぞくと彼女がいて、子供たちに向ける笑顔に引かれていったんだ」


「……フウン」


「なかなか話すキッカケが作れなくて、どうしようか考えてたとき、彼女がバレンタインデーのチョコレートをくれたんだ。サッカー部のマネージャーから渡された段ボール箱の中に、彼女の名前が書いてあるチョコがあってさ。次の日、孤児院から出てくるのを外で待ってて、その時、付き合ってくれと言ったんだ」


「……なんで、長続きしなかったの?」

「……俺の、せいなんだ」声のトーンが落ちるので「何があったの?」


「……彼女のことをやっかむ連中がいて……守ってやれなかったんだ」そう言って俯くので「やっかむって、練習を見にきてた取り巻きの女性たちのこと?」


 ショウは数回頷くと「相当ひどい事をされたらしい。それなのに、彼女は一言もそのことを言わなかったんだ」


 両手で顔を覆うショウに、声を掛けられない。


「半年後、急に彼女が大学を辞めてしまったんだ。電話しても家に行っても会ってくれなかった。会えなかったんだ。顔に大ケガをして、入院してたんだよ」


「どうして!」

「取り巻きの子たちがやったらしい」

「エッ!」


「彼女の父親からその事を聞かされたときは、ショックでなにも言えなかった。「娘をこれ以上傷つけないでくれ。頼むから二度と会わないでくれ」と、泣きながら言われた」


「そんな……」



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