30-2 意地の張り合い
アイスティーを飲んで一息入れると「明日はどこへ行こうか?」
「ちょっと行くところがあるから、海に泳ぎにでも行ったら?」
「どこへ行くんだ?」
「ちょっとね」
「どこへ行くんだ?」
「すぐ戻ってくるわよ」
「単独行動はダメだ」
「あんたに命令される覚えはないけど」
「俺の言うことが命令に聞こえるのか?」
「してるじゃない」
「じゃ命令する。単独行動するな」
「なんですって?」
「単独行動はするな」
「そんなこと、言われる覚えはないわ」
「じゃあ、どこへ、何しに行くんだ?」
「そういう言い方されると、なおさら答えたくない」
「捻くれ者」
「捻くれてて結構よ」
「……ククッ」
「な、何よ!」
「イヤ、別に」
「いきなり笑うなんて失礼ね」
「クククククッ」
「……言いたいことがあるなら言いなさいよ!」
「かわいいな、と思ってさ」
「な! 何を言うの! さっきは捻くれ者って言ったくせに!」真っ赤な顔をして反論するので「そんな顔、初めて見た」
「私の顔は元々こういう顔なの!」
「クククッ」
「また笑う」
「いつも澄ました顔しかしないからさ。そういう顔もするんだ」
「私がどういう顔してもいいでしょう!」
「クククククッ」
言い返すのに疲れてため息を吐くと「で、どこへ行くんだ?」笑いを引っ込めて改めて聞いてくるので「フン!」ソッポを向くと「フウ、世話の焼けるお嬢さんだ」
「世話なんか焼かなくて結構よ!」ベーッと舌をだすと「アハハハハッ!」今度は大笑い。
「何よ! いちいち笑って!」
「イヤ、つい、アハハハハッ!」
「帰る!」席を立つと店から出ていくので「あ、オイ! ちょっと待てよ!」慌てて席を立ち、レジで清算すると「こんな所に来てケンカしたらダメですよ」ウエイトレスが注意してくる。
「ケンカじゃない。いつものことなんだ」
「でも、彼女、怒って出てっちゃったじゃないですか」
「ちょっと意地っ張りなところがあるんだ」
「ちゃんと仲直りしてくださいね」
「ハイ。ご馳走様でした」
店から出ると、ゆっくり歩きながらコテージへ戻る。
キラがコテージに戻ってきたのは、日も暮れた午後七時半前だった。
ショウは居間でお出迎え。
「どこ行ってたんだ?」
「フン!」
「鍵がないから、ドアの前で待ってると思ってた」
キラは何も言わずに自分の部屋へ入っていくので「本当に手の掛かる奴だな」ため息を吐いて本の続きを読みはじめる。




