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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第七章 休息の計画
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16-1 カフェでのティータイム

 

 部屋で昼食を食べた後、ショウに付き添われてゆっくり階段を降り、正面玄関横にあるサンルームのカフェに入ると、昼食を食べ終わった客が、暇つぶしにおしゃべりをしに来ていた。


 入れ違いに窓際のテーブルがあいたので、ウエイターがテーブルを片付けた後、向かい合って座る。


 外は相変わらずの雨。


 ラルが灰色の空を見て「そろそろ体にカビが生えそう」と言うので「さすがにそれはないだろう?」と苦笑する。


 店内に掛かる音楽はソウル系で、雨音が妙なバランスを取っている。


 ふとラルの目に、テーブルの上のショウの手が写った。


(大きな手。長い指だな。そういえば、ショウの手なんてジックリ見たことなかったな。細長くてきれいな形の爪。マニキュアが似合いそう。何色がいいかな? サーモンピンクがいいかな?)


「どうした? 俺の手、変か?」指を開くと「マニキュアを塗ってみたい」


「エ? マニキュア?」


「似合いそう」と言われて自分の爪を見ると「それはちょっと……」


 真っ赤なマニキュアが、自分の爪に塗られているところを想像してしまった。


「塗ってみたい」

「いや、それはちょっと……遠慮したい」複雑な顔をする。


 まさか、そんなことを言われるとは思ってもみなかった。


「きっと似合うと思う」

「似合うと言われても……」


「いいな」

「なんで?」


「きれいな指だから、きっと映えると思う」

「そうか?」眉間にしわを寄せる。


「いいな」

「お前の指だってきれいじゃないか」


「そんなことないよ。ほら、右手なんか人差し指が曲がってるでしょう? 前に突き指したとき、こんな風になっちゃったの」右手を開いてみせ「不格好でしょう?」


 そう言うと手を引っ込めて悲しそうな顔をするので、ショウはラルの手を取り「小さくてかわいい手だよ。痛かったろう?」するとすぐに手を引っ込め「こんな手、見られるの恥ずかしい」


「恥ずかしがることない。ラルが今まで頑張ってきた証拠なんだから」

「女の手じゃないよ」

「……ラル」


「まあ、今さらどうこう言っても始まらないけどね」頼んだ紅茶が来るとティーポットからカップに入れ「元に戻らないんだから、もう諦めてる」紅茶が飲みやすい温度になるまで、生クリームが乗ったマンゴープリンを嬉しそうに食べはじめる。


 ショウが黙っているので「どうしたの? 飲まないの?」

「エ? ああ」


「それにしても、よく降るね」窓の外を見ると「そろそろ小雨になってもいいのに」


「それでもだいぶ収まってきたから、昨日、調理師の人が、やっと食料を買い出しにいけると言って、数名のシェフと調達に行ってたぞ」


「そうだよね。そろそろ食糧庫の食材も底を付くころだよね。でも、その中でこうやってスイーツを作ってるなんて、シェフの人達はすごいね」


「ラルの食事も特別に作ってもらってるから、お礼をしないといけないな」

「そうだよね。お礼を考えないと……」


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