30-1 意地の張り合い
外へ出るとキラはショウの後ろを歩き、近くのレストランへ向かう。
「なんか、いいように振り回されてる気がする」
「いつまでむくれっツラしてんだよ」
「いつまでだっていいじゃない」
「奴らに捕まるよりマシだろう?」
さらにむくれるので「いつまでもそんな顔してると、眉間にしわがよるぞ」
「結構よ!」もっとムッとして答える。
それから少し歩くと振り返り「並んで歩いたほうがサマになるんだけど」
「後ろでいい」
コテージから一番近いレストランに入ると、中途半端な時間のせいか数人の客しかいなかった。
席に着くとウエイトレスが注文を聞きにくる。
ショウはメニューを受け取らないで「時間の掛からないものをお願いします。お昼を食べそこなっちゃって、腹ペコなんだ」
「じゃあ、お客たちさんも検問に引っ掛かってたんですか?」
「イヤ、ビーチで海を見てたんだ」
「そうなんですか」
「だから、できるだけ早く持ってきて」
「はい」答えて戻っていく。
「奴も必死だな」向かいに座っているキラを見ると「今日だけよ。明日になれば収まるわ」
「例の小包が届くから?」
「そうよ」
「それにしても、よく彼らが温室に閉じ込められてるとわかったな」
「大体の調べは付いてたから」
「なるほど」
急に考え込むキラに「どうした? 何か気になることでもあるのか?」
「いいえ、何でもないわ」
「何か気になることがあるんだろう?」
「……まあね」
「何だよ」
「なんでアレンがあんなに早く目覚めたのか、わからないのよ」
「薬の量を間違えたんじゃないか?」
「そんな事ないわ。あの麻酔スプレーの威力は強力よ。体質にもよるけど、あんなに早く効き目が切れることはないわ」
「じゃあ、特異体質だったんじゃないか?」
「考えられるわね。かなりの酒飲みらしいし」
「それが原因かもしれないな」
そこへ、先程のウエイトレスがカレーを運んできた。
「ヘェ、うまそうな香り」
「自家製のカレーです。このピクルスもここで漬けた物なんですよ」
「それはすごい。では、早速いただきます」スプーンを取る。
ウエイトレスがアイスティーを持ってくる頃には、お皿がきれいになっていた。
「もう食べてしまったんですか?」
「美味しかった。見た目が水っぽかったから味が薄いんじゃないかと思ったけど、スパイスが効いてて、食べはじめたら止まらなくなった」
「もう少し味わって食べればよかったわ」
二人とも無言で一気に食べてしまっていた。
「お口に合ってよかったです。では、ごゆっくり」お皿を片付けると戻っていく。




