14-1 舞い込んできた情報
翌朝、ショウはいつものようにルームサービスが運んでくる朝食が乗ったワゴンを受け取り、ベッドの足元に置いてある横長のテーブルにラル用の朝食を乗せると、テーブルの端を持ってラルの前まで動かし、端にネットニュースに設定したラルのノートPCを置く。
自分のトレーは少し離れたところに置いてあるテーブルに置き、食べはじめると、ラルは俯いたまま手を付けようとしない。
「ちゃんと食べないと薬が飲めないぞ」
ラルはショウを見ると、再び下を向く。
ショウはため息を吐くと手を止め「なにが気に入らないんだ?」ラルのほうを向くと、答えない。
「また目眩がするのか?」と聞くと首を横に振るので「じゃあ、デザートがないから不満なのか?」また首を横に振る。「声が出なくなったのか?」心配して聞くと、やっぱり首を横に振る。
「じゃあ、何がイヤなんだ?」
ラルは下を向いたまま何も言わない。
「ラル、お前の言うとおりにしてるだろう? 何がイヤなんだ?」
「……自分」
「エッ?」
「……自分」
「それって、自己嫌悪になってるのか?」と聞くと頷くので「どうして?」
「……ショウに、わがまま、言ってる」
「昨日のことだったら、俺の言い方が悪かったから、気にするな」
「……でも……」
「お前が勘違いするような言葉を使った。悪かった」
「……でも」
「じゃあ、どうしたら食べてくれるんだ?」
「それは……」
「シェインに言って、デザートを作ってもらうか?」ベッド脇の受話器を取ると「いい! 今はいい!」
「じゃあ、どうすればいい?」
「食べる」フォークを取ると、細かく切ったキャベツのスープを食べはじめる。
「無理に食べることないんだぞ」
「無理じゃない」
「……そうか」
しばらくの間、一言も話さずにそれぞれ朝食を食べていると、ノートPCから流れてくるローカルのネットニュースがBGMのように流れてくるが、その中の一つに二人が反応する。
そのニュースとは、姿を見せない正体不明の領主オルトが、大雨のせいで大陸に渡れず、向かいの港町のホテルで足止めを食っているというもの。
ラルの向かいに来るショウが音量を上げる。
“ 大陸のルナノヴァ国の領主であるオルト卿は、二十日間の外交を終えて帰国予定の昨日から、対岸の港町で、大雨のために足止めされているとの情報が入ってきました ”
滞在していると思われるホテルの外観が映し出され、右下に映るアナウンサーがニュースを読み上げている。
“ なお、オルト卿が滞在しているホテルがある港町スペ・シン・フトゥルムの市長は、オルト卿の滞在期間中に、食事会を催す予定との情報も入ってきていますので、謎の領主と呼ばれているオルト卿が姿を現すのでは、と噂が広まっています ”
「ショウ! グループに連絡して!」
「ラルはオルトの情報を集めろ!」
ショウは席に戻ると朝食が乗ったトレーを退かし、ノートPCを引き寄せてメールを作成すると、ラルはテーブルの端に置いてあるノートPCを引き寄せ、オルトが滞在していると報道されたホテルで、オルトらしき人物を見たという投稿が上がっているか、調べはじめる。




