16-3 回復の兆し
「あれだけの組織を作ることができるんだもん。私たちの言動や行動から、可能性の一つに入っててもおかしくないよ」
「……そうだな。しかし、そのことでお前になにか仕掛けてきたら、俺が潰す」
「……ショウ」
「お前を守ることが俺の使命だ。これはなにを置いても優先される。だから、お前はなにも心配しないで、体調を戻すことだけに集中するんだ」
「……それで、いいのかな?」
「俺たちの目標はまだ先が見えないが、グループの活動もうまくいってるから、余計なことは考えるなよ」
「……アディは、私たちを、これからどうしようと考えてるんだろう?」
「今は組織の一員として重要な任務を任せてくれてるから、彼の信頼を得ていると思ってる」
「……そう、かな?」
「心配するな。なにかあれば俺が対処する」
「それじゃあ、ショウにばかり重荷を背負わせることになる……」
「なら、その見返りをくれるか?」
「……見返り?」エッ? という顔を向けると「それは、言わなくてもわかるだろう?」
「……来ちゃダメ!」
「エッ?」
「来ちゃダメ!」
「……なぜそうなる?」
「来ちゃダメだからね!」
「なにか勘違いしてないか? 俺が言った見返りは、このまま休暇を続けると約束することだ」
「……来ちゃダメ!」
「お子様ラルちゃんに手なんか出すかよ」
「……お子様じゃないもん」
「そうなのか?」
「……お子様でいい」
「なんだって?」
「お子様でいい!」
「開き直ったな」
「だから、来ちゃダメ」
「わかった」ショウは立ち上がると、ノートPCや資料を持って隣の自分の寝室へ行く。
寝室に戻るとソファに座ってテーブルにノートPCなどを置き、仕事の続きを始めると、しばらくして「ワアアアアアアッ!」と、ラルの泣き声が聞こえてくるので、慌てて寝室へ戻る。
「どうした!」
「ワアアアアアッ、来ちゃダメ!」
「は?」
「来ちゃダメ!」
「なんだよ」戻ろうとすると「ワアアアアアッ!」と泣き出し、止まって振り向くと「来ちゃダメ!」
「……俺はどうすればいいんだ?」
「来ちゃダメ」
戻ろうとすると「ワアアアアアッ!」と泣くので「ラル。どっちかにしてくれないか? これじゃ、この場所から動けないだろう?」
「……来ちゃダメ」
「なら、この場所ならいいんだな?」と聞くと頷くので、ベッド脇のテーブルを今いる位置までずらし、隣の寝室からノートPCや資料をまた持ってくると、接続して仕事の続きを始める。
その様子を見ていたラルが泣き止むので「顔拭いてから寝ろよ」座っているイスの背もたれに掛けてあるタオルを投げると、受け取ってゴシゴシと拭きはじめるので「ゴシゴシ擦るな!」
すると、力を弱めてフキフキと顔を拭き、横になる。
「のどが乾いたら言えよ」と言うとゆっくり頷く。
ラルは寝付くまでショウの動向を見ていたので(言葉に気を付けないとダメだな。勘違いされるようなことを言ったから、今回は配慮が足りなかった)
寝息を立てるラルのところへ行くと(これで血圧が下がったら、また先生に怒られるぞ)
しばらく様子を見たが姿は戻らなかったので、テーブルに戻ると仕事を続ける。




