14-3 思いもよらない繋がり
午後九時すぎにラルが寝ると、少しして例のシェフからメールが来た。
“先ほど勤務時間が終わり、着替えが済んだところです”
“お疲れ様でした。では、俺の部屋に来てもらえるか?”
“承知しました。これから伺います”
ショウはラルの寝室の続きドアから隣の自分の寝室に戻り、更に隣のリビングで来るのを待つと、しばらくしてドアがノックされた。
「はい」
『僕です』
返事を聞いてドアを開けると、普段着に着替えた例の彼が長方形のトレーを持っているので「なにを持ってきたんだ?」招き入れながら聞くと「差し入れです」ソファ前のテーブルに置くと長方形でステンレス製の蓋を取り「きっと、ここに来られてから飲まれていないだろうと思って」
トレーに乗っていたのは、ウイスキー一式とチーズやハムなどのおつまみ。
『僕の奢りなので気にしないでください』
「それじゃ君に悪い。半分出すよ」
『まあまあ、僕に奢らせてください。それに、肉類を食べたいんじゃないんですか?』
「……まあ、な」
『僕は食べられないので、食べてください』
「そんなことまで気を遣わなくていいよ」ソファの席を勧め、向かいに座ると『ロックがいいですか?』グラスに氷を入れていくので「高いんじゃないのか? 本当に半分出すから」
『実は、雨が降る前に、急遽、帰国されたお客様から頂いたものなんです。だから大丈夫ですよ』
「本当か?」ボトルを取って蓋を回すと、すでに開けてある上に少し軽いので『本当でしょう?』
「わかった。では、遠慮なくいただくよ」ウイスキーをグラスに入れていくと「そういえば、君の名前を聞き忘れてたんだ。教えてくれないか?」
『僕も、あとで名乗らなかったことに気付いて、焦りました』苦笑しつつ、おつまみが乗ったお皿をテーブルに置くと『僕はシェインと言います』
「シェインか。ではシェイン、どうしてこの大陸に来たんだ?」グラスを渡しながら聞くと『僕は、シンシア様をお迎えに来たんです』
「シンシアを?」
『はい。弟君から、シンシア様の体力が回復されたら、この港から脱出する計画が組まれているので、待機しててほしいと仰せつかりまして、一時待機場所となってるこのホテルにシェフとして入り、シンシア様が来られたら状況を確認して、弟君へ報告することになっています』
「シンシアの弟君って、ジェシーのことか?」
『ご存じなんですか?』
「ああ。ということは、君はもしかして、水の……」
『はい。僕は水の貴族である、シェフィールド侯爵にお仕えしている者です』
「シェフィールド侯爵?」
『アッ、ご存じなかったんですか?』余計なことを言ってしまったと、困った顔をするので「まあ、シンシアの苗字なら、いずれ分かることだから」
『……そう、ですね』
「ほかに、火や土などを担当する貴族がいることも知ってるよ」
『……そうなんですか?』
「だから気にすることない。それより、シンシアについて話すことがある」




