12-3 珍事の余韻
「いきなり長期滞在すれば、どうしても欲しいものが出てくるだろう? だけど金は余分に持ってきてない。そうなると、どうしても欲しいものがあったとき、誰かに買ってもらうしかないだろう?」
「それは、ショウに買ってもらえということ?」
「そう」
「なんでそんな面倒くさいことするの?」
「前に、甘えるということを教えてやると言っただろう?」
「そのためにこんなことしたの?」
「それもある」
「そんなこと、しなくていいって言ったのに」
「人に頼るということを覚えるためだ」
「頼る?」
「今まで一人で任務をこなしてきたから、難題にぶつかったとき、無理してでも一人で解決してきたんだろう?
だからグループからの任務も、単独で乗り込んで、ウィルシーたちにはバックアップのみを頼んだ。
その為、捕まったときは誰にも頼れず、ひどいケガを負わされることになった。
今回はなんとは抜け出すことができたが、次はどうなるかわからない。
だから、これ以上、お前に危険な行動を取らせないためにも、誰かに頼るということを覚えてほしいんだ」
「それは、キラのメンバーであれば、みんな同じ状態だよ。私だけじゃない」
「だからといって、このままでいいわけないだろう。ほかのメンバーがどうあれ、お前の状況をなんとかすることが先だ」
「じゃあ、なにか買ってもらったら、本部へ戻っていいの?」
「ここのなにが気に入らない。本部であれだけイヤな思いをしたのに、どうしてそこまでして戻りたいんだ」
「それは……」
「グランチェストの娘がいるからか?」
「……それも、ある」
「ほかには?」
「……それは……」
「それはなんだ?」
「それは……」
「お前がゆっくりできないのであれば、ここにいる意味がない。なにが問題なんだ?」
「……それは……」
「ラル。なにか言えば俺が怒ると思ってるのか?」
「……」
「怒るわけないだろう」
「だって、せっかくショウが計画して手配してくれたのに、それを潰してしまうから……」
「そんなこと気にしてたのか?」
「……そんなことって、だって、私なんかのために手配してくれたのに……」
「私なんかと言うなとあれほど言ってるのに、まだ言うのか?」
「……怒るじゃん……」
「当たり前だろう! 言うなと言ってるのに、きかずに何回も言うからだろう」
ラルが泣きそうな顔をするので「まず、自分を見下す考えから直さないといけないな」
「……」
「とにかく、ここの何が気に入らないんだ?」
「……」
「怒らないから」
「さっき怒った」
「……だから、さっきのことは別だろう? 質問を変える。どうして本部に戻りたいんだ?」聞きなおすと、さらに泣きそうな顔をするので「どうして話してくれないんだ? 任務を取り上げたからか?」
「……」
「ラル。そんな顔をさせるためにここにいるんじゃないんだ。ちゃんと理由を話してくれれば対処するから」
「……不特定多数の、人間が来る……」




