12-2 珍事の余韻
ラルの部屋に入るとリビングのソファに向かい合って座り、話を続ける。
「その話はお断りします」
「社長の椅子を捨てるの?」
「ラール」
「まあ、ワガママそうなお嬢様の相手は疲れそうだもんのね」
「まったく」
「そうだ。いつから私はショウの恋人になったの?」
「いつからだろうな」
「……あのね」
「なにか困るようなことでもあるのか?」
「ある」ムッとすると「その顔に寄ってくる虫から害を受ける」
「寄ってくる虫って……」
「あの様子だと、きっとなにか言ってくるよ」
「なんて?」
「あなたよりもわたくしのほうが彼にふさわしいわ、とか、わたくしの娘と比べたらかわいそうですわ、とか」
「まあ、あのお嬢様より自己中じゃない点は勝ってるな」
「他のところは彼女のほうが勝ってると言うの?」ムッとすると「俺は、いかにも化粧してますっていうコッテリ顔より、薄化粧で自然に見えるほうが好きだし、オートクチュールの服を着て、年より老けて見えるより、ラフな格好して気取らないほうがいいし。切り口上で相手を見下すように話したり、気分によって口調を変える言い方より、時々捻くれても、裏表のない言い方をするほうがいい」
「全然褒めてない!」
「……言い方がまずかったか?」
「どうせ私は無頓着で、化粧は疎かにするし、洗いざらしのヨレヨレを着てるし、時々でも捻くれた言い方をするよ!」
「そう言う意味で言ったんじゃない」
「本当のことだから、言い直さなくていいよ……」しょげるラルを見て「じゃあ、雨が上がったら、町へ買い物にいこう。半袖の服を買う約束だし」
「……行かない」
「本部へ戻ろうと思ってるから?」
「余分なお金を、持ってきてない」
「金なら俺が出す」
「そんなことしなくていい」
「腕時計を買ったことで、まだ金銭的に苦しい思いをしてるんだろう?」
「それは……」
「だから、買えずにいるんだろう?」
「……」
「そうだろうと思ったよ。金なら俺が出すから、欲しいものを買えばいい」
「いいって」
「なんで?」
「本部に戻ったら買うから」
「金があるのか?」
「……グループから支給金がきたから」
「足りるのか?」
「……大丈夫」
「ウソだろう?」
「ウソじゃない」
「顔がウソだと言ってる。お前はすぐ顔に出るからな」
「ウソじゃない」
「今まで買うことができなかった生活必需品とかを買えば、残りはそんなにないだろう? 食費もあるだろうから、余分な金はないはずだ」
「そんなこと、ない……」
「ここにいる間は俺が全部出す」
「そんなことしなくていいって」
「これは俺が決めたことだ」
「そんなこと、勝手に決めないでよ」
「今回のことをお前に黙ってたのは、事前に準備させないためだ」
「……どういう意味?」




