10-3 お茶会のお誘い
「例のお嬢様からの招待状だったんでしょう?」ティーセットが乗ったトレーを持ってくるショウに聞くと「ああ」と答えるので「次はどんな手で来るんだろうね」
「二度も断ったんだ。次はないだろう」紅茶とケーキをラルの前に置く。
「お茶を飲むくらいだったらいいんじゃないの?」
「一面識もない人とお茶を飲んで、楽しいか?」
「……相手によると思うけど」
「お前が一番嫌いなタイプの人間と、お茶を飲めと言われるとは思わなかった」
「そういう訳じゃ……」
「そうだろう?」
(さすがに、面倒を起こしてほしいからとは言えない……)
「典型的な自己中のわがままタイプだよ。できるなら近づきたくない」
「あれ? ナディアだってそのタイプだったでしょう?」
「彼女の場合、本部内のほとんどの場所に入れるという、ありがたいオマケが付いてた」と言ってお茶を飲みはじめるので「オマケね」と言うと「ほかにも理由がありました」
そのお嬢様は、ラルが言ったとおり、一度や二度断られただけで諦めるようなタイプではなかった。と言うより、彼女にとって、断られた経験がなかったので、ショックを受けたのと同時に怒りが沸いてきていたようだ。
そのため、今度は直接部屋に押し掛けてきた。
「どちら様でしょうか?」対応に出たショウに「わたくし、フレンティーヌ グランチェストと申します」見上げながら上から目線で答えるので「ああ」
「なぜ、わたくしの招待をお断りになりましたの?」
「僕とあなたでは地位が違いますので。一般人の僕と一緒にお茶を飲んでるところを、あなたのお父上がご覧になったら、機嫌を損ねてしまうと思ったからです」
「まあ、お父様はそのようには思いませんわ」
「僕からも一つお聞きしていいですか?」
「ええ。どのようなことでしょうか?」
「なぜ僕をお茶に誘ってくれるんですか? 部屋から追い出したお詫びですか?」
「その事はとても反省してますわ。わたくしがワガママを言ったばかりに、あなたにご迷惑を掛けてしまいましたから」
「僕の連れが体調を崩してるのをご存知ですよね?」
「お連れの方には本当に失礼なことをしてしまいましたわ。お具合はいかがですか? もし体調が良くなられていなければ、主治医が同行してるので、診るように言いますけど」
「もっと早くにそう言ってもらえたら、快くお茶の誘いを受けたんですけど」
そう言われて言葉に詰まるフレンティーヌ。
「では、失礼します」ショウはドアを閉めてしまった。




