9 大陸へきた目的
翌日は朝から雲行きが怪しく、午後になると雨が降り出してきた。
「いよいよ降りだしたか。しばらく動けないな」窓の外を見るショウが「エミアが二週間くらい降るだろうと言ってたが、雨雲の状態によって多少前後するらしいから、あとの予定が立てにくいな」
そう聞いて(となると、雨が降ってる間は人の動きが制限されるから、新しく客が来ることはないのか)
そう思うと多少は緊張が解け、肩の力が少し抜けるが、数日前に来た実業家らしき一家が我がもの顔でホテル内を歩き回るため、時々、雑音に悩まされていた。
彼らが来たときは、狩りを兼ねての旅行かもしれないと警戒していたが、この大陸では領主の許可がないかぎり狩りをすることは違反となり、逮捕されてしまうことを思い出したため、話を聞くかぎり年に一度の家族旅行らしいので、一応、警戒ランクを下げていた。
(家族旅行だとしても、なんでこんな危ない大陸に家族を引きつれて来るのか、気になる。もしかしたら、領主か政治関係の誰かと会う予定なのかもしれない)
そう思うと探りを入れたくなるが、今の状態では動くこともままならないので、悩んでしまう。
(このホテルは組織の配下にある場所だから、あの鏡に対して警戒してると思うし、体力さえ戻ればいきなり元の姿に戻ることはないだろうから、調整しつつ、情報を取ることにしよう)
一応、本部へ戻るための計画は模索しつつ、調査のターゲットとなる実業家らしき家族の情報を集めることにした。
「手持ち無沙汰だろう? また図書室からなにか借りてこようか?」
「あ、うん」
「なんだ、なにか気になることでもあるのか?」
「私たちを部屋から追い出した金持ち家族なんだけど、どうしてこの大陸に来たのかなって」
「ああ、あの成金系の家族か。お前もあの家族が気になるのか?」
「ショウも?」
「家族旅行だと言ってたが、旅行先にこの大陸を選ぶなら、裏社会に通じる何かしらの事業を生業にしてるはずだ。もしかしたら、領主か、政府関係者の誰かと会う約束があって、カムフラージュのために家族旅行を兼ねて来たのかもしれないな」
(すごい。同じこと考えてる)
「その顔は、お前も同じこと考えてたのか?」
「あ……うん」
(なんでわかるんだろう?)
「まあ、そうだろうな。しかし、調査は俺がやるから、お前は動くな」
「でも」
「ここに滞在してる目的を忘れるなよ」そう言い残すと、図書室へ向かった。




