2-1 ホテル コンコルディア
カイがフロントへ行くと「いらっしゃいませ。ホテル コンコルディアへようこそ。ご予約を承っておりますでしょうか」
ベテランの貫禄がする男性クラークがにこやかに声を掛けてくるので「アウクシリアで予約してます」と答えると「アウクシリア様御一行様でございますね。お待ちしておりました。ただいまご案内いたしますので、少々お待ちください」クラークは隣にいた新人と思われる若いクラークに合図を送ると、彼は一礼して奥の事務所へ引っこむ。
まだ右脚の傷が完治していないラルのバッグを持つショウがカイのところへ行くと「こんな豪華なところに泊まっていいのか?」と困惑気味。
『私たち、すごい場違いな格好してると思うんですけど』
あとから来る中学生くらいの息子を連れた父親が、自分たちの服装とホテルの雰囲気を比較して恥ずかしそうにするので「カイ。ここのことを知ってるんだったら、もう少し服装を考えてくれてもいいんじゃないの?」ショウの隣にいるラルが耳打ちすると「いいじゃねえか。他の客たちだって同じような服着てんだからさ」
「そんなの、ごく一部じゃない!」
「そうか?」
フロント向かいのロビーで寛いでいる人達やカフェから出てきた人達の中には、同じように普段着の客がいるので、それほど浮いている感じではない。
「ご立派な服装の団体客が来たら、それこそ目立つだろう?」
「ま、まあ、それはそうだけど……」
その後、ラルたちは、フロント奥の事務室から出てきたフロントマネージャーに案内されて、建物の裏へ続く通路へ案内されると、渡り廊下の先にある離れの建物に連れていかれた。
この建物は、領主がパーティを開いたときの来客用の宿泊室として建てられたもので、メインの建物同様、ぜいたくに作られた二階建てのパレス。
フロントマネージャーは中に入ると左手にあるラウンジへ行き、ソファに座るよう案内すると、説明を始めた。
「皆様、長時間の移動、お疲れ様でした。こちらの建物は皆様の貸し切りのため、他のお客様が来ることはございませんので、安心してお休みください。また、お食事は隣のダイニングルームにご用意いたしますので、午後六時になりましたら、ダイニングへお集まりください」
出入り口を挟んだ向かい側のドアを指し「それでは、お部屋の鍵をお渡ししますので、お名前を呼ばれた方はお越しください」順番に渡していくと、受け取った部屋番号を確認して各自部屋へ向かう。
一階の部屋は左端にある階段横の廊下から奥へ行き、ラウンジと壁で仕切られた通路の左から花の名前がついた部屋が並ぶ。
二階も同様に、花の名前がついた部屋が五部屋並んでいる。
ラルたちは女性四名、男性十一名の十五名なので、一階の五部屋と二階の一部屋を男性が使い、二階の真ん中の二部屋を女性三名とラルで使い、残りの二部屋をドライバー二名と、ショウとカイで使うことになっていた。




