1-2 異変の確認
「俺も人間なのに、なぜ俺にはイータル ヴェンティたちが見えるんだろうな?」
「それは……」
「お前と一緒にいるからだと最初は思ったが、もしそうだとしたら、カイたちにだって見えていいはずだ。それに、タキやアディたちも。でも、彼らには見えてない」
「……」
「お前の叔父であるグループの責任者は、確認する方法がいくつかあるみたいなことを言ってたが、その理由は教えてくれないんだろう?」
「……」
「お前は理由を知ってるのか? 知ってるんだったら教えてくれよ」と言うと答えないので「これも言えないことなのか?」と聞くと小さく頷く。
「フゥ、マジかよ……わかった。今はこれ以上聞かない。話せるときがきたら教えてくれ」
翌朝、ラルたちは午前九時に宿屋を出発して北上すると、午後三時過ぎ、目的の港町に着いた。
この町はタルメイトといい、海岸沿いに発展している港町。
対岸との交流があるので、いろんな行商人たちが町の至るところで商談しているため、活気に溢れていた。
ここから半日ほど東へ行くと、最初に上陸したケッドマンの屋敷があるペラノイオほどではないが大きな港街があり、反対の西側の町外れには、陸側半分を白樺などの広葉樹林に覆われている、淡水と海水が混ざったわりと大きな湖があり、ラルはこの湖でウィルシーたちと落ち合うことになっている。
その湖から少し町の中心地へ戻った丘の上に広い庭園があり、その庭を斜めに横切る形で作られた小さな川が湖に流れ込んでいて、庭園の奥に、白樺に囲まれた歴史を感じさせる石造りの建物が建っている。
昔は領主の別荘だったそうで、今はホテルに改築されていた。
カイはそのホテル前の駐車場にジープを停め「ここが今日の宿だぜ」と言うので「この建物を宿と呼ぶの?」ラルが呆れると「そんじゃ、別荘とでも言っとくか」
「ホテルでいいじゃないの」
ほかのジープから降りてきたシルバーフェニックス御一行も、建物のあまりのきれいさに驚いて、見上げたまま固まっている。
一行はホテルに入ってさらに驚いた。
中はまるで中世にでも来たかのような豪華な造りで、細部にわたってきめ細やかな配慮が行き届いているとわかるくらい、完璧な装飾が施されていたからだ。
正面奥には赤いじゅうたんが敷かれた大きな階段があり、途中から二手に分かれているで、まるで大きな蝶が留まっているように見える。
フロントは階段手前の左側にあって、その向かいにソファが数脚置いてあり、玄関を入って右側にはサンルームを利用したカフェがある。
「さすが、元領主の別荘というだけあるな」内装に圧倒されるショウ。
「贅沢の極みを見たような気がする」と言うラルに「俺も初めてここに来たときは驚いたぜ。けど、たまにはこういう貴族のような雰囲気を味わうのもいいんじゃねえか?」
「じゃあ、身のこなしやマナーも、貴族レベルにしないといけないわね」
「なんだよ。そんな堅苦しいことを言わなくてもいいじゃねえか」




