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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章 大陸にある保護団体
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69-1 意思の疎通

 

 ラルたちを見送るウィルシーたちは『大丈夫でしょうか? 心配ですわ』

『私たちができることはここまでよ。あとは二人が決めるでしょう』


 二名は、ショウがラルのあとを付けてきていたことを知っていた。


『今の状態で彼から離れたら、彼女は生き延びられませんわ』

『大丈夫よ。彼がラルから離れないから』



 そのショウは、ラルの歩調に合わせて歩いていた。


「彼女たちとケンカでもしてたのか?」

「エッ、なんで?」


「話し合ってるような雰囲気じゃなかったから」

「……そんなこと、ない」

「……そうか」


「動いて、大丈夫?」

「ン? ああ、大丈夫だ」

「本当?」


「心配するな。それより、脚は大丈夫か?」

「前よりは」

「そうか。無理するなよ」


 そのままラウンジへ行って食事を取ると、テイクアウト用のストレートティを持ってラルの部屋へ戻る。


 テーブルに向かい合って座り、薬を飲むと「三人でなにを話してたんだ?」

「……ちょっと」


「俺のこと、聞いたんだろう?」

「……少し」

「……そうか」


 少しの間、沈黙が続くと「ナディアのほうがかわいい」


「エッ?」

「ナディアのほうが、かわいいでしょう?」


「……確かにかわいいと思うけど、俺には、お前のほうがかわいく見える」


「なんで?」不思議そうに聞くので「そうやって、思ったことをすぐ顔に出すから」

「……からかってるの?」


「本当のことを言っただけだ」

「そんなに面白い?」恨めしそうに見るので「かわいいと思う」


「信じられない」今度はムスッとした顔をするので「フフッ、そういう顔するとからかいたくなる」


「やっぱりからかってるんじゃないの!」泣きそうな顔をするので「本当にからかおうとは思ってないよ!」


「ウソ!」

「ゴメン、言い方が悪かった」


「私をからかってそんなに面白い?」

「ラル、違うんだ」

「触らないで!」


「すぐムキになるのがかわいくて、つい、からかってしまうようなことを言ってしまうんだ」

「面白いからでしょう!」


 またラルを泣かせてしまったので、言葉に詰まる。


「私は、オモチャじゃないのよ」

「オモチャだなんて思ってないよ」


「私をからかって面白い? 面白いでしょうね。どんなことを言われても、すぐに反応するんだから……」

「……ラル」


「ケガをして十分に動けないから、なにか起きたとき、すぐ対応できるように気を配ってることを、逆手に取られるなんて……」


「それが聞きたかった」

「それ?」


「そういうことをもっと話してほしいんだよ。泣かせたあとでお前の気持ちがわかる。その時になって話してくれるから。そうなる前に話してほしいんだよ。そうすれば、お前を泣かせなくて済む」

「……」


「俺だって辛い。でも、こうしないとお前は話してくれない。この方法でしかお前の本当の気持ちが聞きだせない」

「……」


「俺が、お前をからかって楽しんでると思ってるのか? むやみにお前を泣かせて面白がってると思ってるのか?」

「……」


「お前の力になりたいのに、いつも気持ちが伝わらない。何かしてやりたいと思っても、いつもとんでもないことになる。俺はどうしたらいいんだ?」


「私のことなんか、気にしなければいいのに」

「そう考えるなと言ってんだろう!」

「あ……」


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