68-5 夜の湖会議
「今のアイツは、何が常識で何がおかしいのか、感覚がマヒしてきてるからわからなくなってる。とんでもない事でも、仕方ないからと言ってやってしまう。誰かが元に戻してやらなければさらに危険に向かってしまう。その役を俺がやりたいんだ。いや、たぶん、俺にしかできないだろう」
『もう一度言うわ。彼は貴重な存在よ。わかるでしょう?』
「エミアもウィルシーも、前はあんなにショウを嫌ってたのに」
『彼のことを誤解してたのよ。彼がどれだけあなたのことを想ってるか、その事を聞きもしないで、ただ彼が人間だからという目で見てたの。でも、彼と話したあとは考えが変わったの』
『あなたが彼に言えないことはわかってますわ。でも、その事が今のあなたにとって、なんの役に立ちますの? この戦いが終わるまで、その事はお忘れになったほうがいいですわ』
「そんな事できない」
『できなければ、あなたは破滅への道を歩むことになりますのよ』
「それは……」
『とにかく、今はお話しできることだけお話すればいいんですのよ』
『こんなうやむやな状態で出ていっても、心の重りになってしまうわよ』
『あなたの任務は単独で続けられるものではありませんわ。命に関わることなんですもの』
『ラル。あなたは今、どんな方に傍にいてほしい?』
「エッ、今?」
『どういう方に傍にいてもらいたい?』
「どういう方に?」
『まずはそれを考えてみるのね』
『さあ、基地へお戻りになって、彼と話し合ってください』
「でも……」
『出ていくことはいつでもできるけど、出ていったら、彼と話し合う機会がなくなるのよ』
そう言われて、ラルはなにも言い返さず、本部への道を戻っていく。
どうしようかと考えながら途中の森の中へ入ったとき「会議は終わったのか?」と、近くの木の陰から聞こえてきた。
「ショウ! いつからそこにいるの!」
「最初からいた」
「最初から? あとを付けてきたの!」
「前に、本部から出ていくと言ってたのを思い出して、さっきごり押ししたから、彼女たちに話した後、そのまま出ていくのかと思って付けてきた」
「話を聞いてたの?」
「俺の耳は集音器じゃないんだぞ。この距離で聞こえるはずないだろう?」そう言われて後ろを向くと、ずっと先の湖にウィルシーたちが見えるが「いつものように、盗聴器を付けてるんじゃないの?」
「そんな時間なかった」
「どうかしら?」
「終わったんなら夕飯食べに行こう」本部へ向かって歩きだす。




