68-1 夜の湖会議
この後、ラルは椅子に座って考えた。
「こんな事になるんだったら、ショウと組むんじゃなかった。任務のパートナーだから気遣ってくれるんだと思ってた」
さっき、ショウが言った言葉が信じられなかった。
「こんな事になるなんて……」
この後のラルの行動はすでに決まっていた。
「もう、一緒にいられない」
代わりのメンバーが来たら出ていくつもりでいたが、こうなったら考え直さなければならない。
とりあえず荷造りすると、夜になるのを待った。
辺りが暗くなってきたころ、ラルは湖に出かけた。
『お久しぶりですわね』ウィルシーが顔をだし『お元気になられてよかったですわ』しかし、浮かないラルの顔を見て『どうなさいましたの? お元気がありませんのね』
「……お別れを言いにきたの」
『なんですって!』
「今夜、本部から出ていく」
『なんで出ていくの?』エミアが降りてきて『彼と一緒にいくの?』と聞くので「いいえ、一人でよ」
『なんで? 彼は納得したの?』
「……話してない」
『なら、追い駆けてくわよ』
「だから、あとを追って来れないようにしてほしくて、頼みにきたの」
『断る』
「なんで!」
『彼との仲は戻ったんでしょう? それなのに、なんで彼を置いてくのよ。また何かあったの?』と聞かれ、話そうか戸惑っていると『何があったの?』再度聞いてくる。
「とにかく、一緒にいられないのよ」
『また誰かちょっかい出してきたの?』
『それは考えにくいですわ』
『なんで?』
『あの事件の後、アディが他の人達に厳しく注意したはずですわ。ですから、同じことを繰り返す人はいないと思いますもの』
『じゃあ、彼が原因ということね?』
『でも彼は、ラルがイヤがることはしないと思いますわ』
『そうよね。ラルのためにスタニルを異空間の檻へ監禁したくらいだものね』
「なぜその事を知ってるの!」
『私たちがスタニルの情報を彼にあげて手伝ったからよ』
「……そういうことだったの」
『三週間ほど前になりますわ。彼がわたくしのところにいらして、スタニルの情報が欲しいから、探ってきてくれないかと頼まれましたのよ』
「ウィルシーに?」
『そうですわ。ですからその事をエミアにも頼んで、調べて情報を差し上げましたの』
「なんで引き受けたの! 彼はもう少しで死ぬところだったのよ!」
『頼まれたとき、わたくしも驚きましたわ。ですから、情報を差し上げる前にお聞きしましたの。なぜ知りたいのかと。彼、こう答えましたのよ。「アイツにケガをさせた上に汚そうとした。だから許せない」と』
『その後、私がこう聞いたの』エミアが続ける。『死ぬ気なのかって。そうしたら、アイツを置いて先に死ねるかって答えたわ』
「……」
『でも、勝つための策がなければ無謀な行動としか思えないと言ったら、虫が良すぎるかもしれないけど、力を貸してほしいと言ってきたのよ』




