67-3 改善方法
戻ってくると水が入ったコップと痛み止めの薬を渡してティーポットをテーブルに置き、ラルの隣に椅子を持ってきて座ると「脚の湿布を替えようか?」
「ううん、大丈夫」薬を飲んでホッとする。
「ケガを悪化させるようなことをして悪かった」
「ショウが悪いんじゃない。私があんな自己暗示を掛けて、ショウにひどいことしようとしたから、謝るのは私のほう」
「そんなことない」
「本当に気にしないで。私への罰だから。ショウに……あんな事させちゃって……」
「……お前、本当に優しいな」
「エッ?」
「いつもそうやって俺に気を遣ってくれる」
「当然だもの。いつも迷惑かけてるんだから」
「だからって、無理してまで気を遣われると心苦しくなる」
「余計なことしてる?」涙ぐむので「ごめん、言葉が悪かった。そこまで気を遣わなくてもいいと言いたかったんだ」
「だって、私なんかのためにいろいろやってくれてるから」
「二度と私なんかと言うなと言っただろう。何度言えばわかるんだ」黙り込むラルに「もっと自分に自信を持て。お前が自分を見下すことはないんだ。もしそういう考えがあるんだったら、今すぐ捨てろ」
「でも……」
「これから、でも、という言葉も禁じるぞ」と言われてなにか言い返そうとするが、結局、なにも言えずに俯くと、涙が落ちてくる。
「俺は、お前が潰れていくのを見てられないんだ。何かあるたびに傷つくお前を守ってやりたいんだよ。だから、俺の言うことを悪いほうに取らないでくれ」
「……」
「ラル、お前をイジメてるんじゃないんだ」
「……」
「泣かないでくれよ」
「……」
「言い方がきつかったか? 言葉が強すぎたか?」
「……」
「ごめんな」ラルの肩を抱き寄せると「お前が一生懸命、気を遣ってくれるの、とても嬉しいよ。でも、俺が一緒にいると、お前は自分を犠牲にしてまで俺に気を遣う。そこまでしてほしくないんだ。そこまでする必要ないんだよ」
「……」
「俺がお前に何かしてやると、お前はそれ以上に返してくれる。そんな事する必要ないんだ。そんな事してほしくてやってるんじゃないんだ」
「……」
「俺は、お前の喜ぶ顔が見られればいいんだ。それだけでいいんだよ」
「……」
「お前は何もする必要ないんだ。ただ、喜ぶ顔を見せてくれればいいんだよ」
「……」
「それが、俺にとって一番嬉しいことなんだから」
「……」
「こんなに傷ついた身体で無理してほしくないんだ。堪えてまで俺を気遣うことはないんだよ」
「……」
「痩せて、こんなに細くなった腕で、無理することないんだ」
ラルの左腕を掴むと、腕の細さを隠すためにわざと大きな服を着ているのがわかる。
慌てて手をどけるとショウから離れる。
背を向けるラルに「さっき腕を掴んだとき、ビックリしたよ。ここまで痩せてるとは思わなかった」
「……」
「お前を抱き上げるたびに、こんなに小さかったか? こんなに軽かったか? と思ってた」
「……」
「指を見ればすぐにわかったことなのに、気付かなかった」
ラルの指に填めてあった指輪が、金の鎖に通して首から下げてあった。
「ここから出て、どこか小さな村へ行こう」振り向くラルに「しばらく任務から離れて、ノンビリしよう」




