65-3 葛藤
「そんなこと言うから、ショウまで憎んでしまうそうになるのよ! そんなふうに言わないで! 私を除け者にするような言い方をしないで!」
「除け者になんかしてない!」
「孤独を感じてしまうの。その孤独と戦わなければならないのはわかってる。
それがキラとして選ばれた私の試練。でも、あまりにも長すぎるの!
人間はみんな仲良く暮らしてるのに、私は深入りしてはいけないの。
いつも一人でいないといけないの。
だから、ショウまで人間の立場でものを言うと、壁を感じてしまうの。
人間なんだから、当たり前なんだけどね」
「そこまで気付かなかった。お前には壁のように聞こえてたのか。言っとくが、俺は壁を作ってる気はないからな」
「言われて当然だと言って壁を作ってるじゃないの! 俺は人間だ。だから言われて当然だ。お前は違う。立場が違うって!」
「そんなつもりで言ったんじゃない! お前が言いたいことをすべて呑み込んでしまうからだ! 呑み込んでしまったことを言ってほしいから言ったんだ!」
「……」
「言葉って難しいな。このままじゃ、お前に対して一言も話せなくなる」
「……ごめんなさい、知らなかった」
「お前が謝ることない。もう少し考える。だからお前も、イヤだと思った言葉や疑問に思ったときは、すぐ聞いてくれ。俺たちはまだ、お互いを知らなすぎる」
「……」
「お前の泣き顔を見なくて済むのはいつになるのか……」
「……」
「俺が何か言えば、いつもお前を傷つける。そんな気は全然ないのに、誤解が生まれる」
「……」
「わかってる。お前はまた俺を怖がってる。だから話してくれない」ラルが驚いた顔をするので「お前が歩み寄ってくれなければ、この溝は埋まらない」
「……」
「お前が俺を怖がる理由はわかってる。それはアディたちにも言えることだ。お前は同じ目で俺たちを見る」
「……」
「そんなお前に対して、どう接したらいいか、ずっとわからないでいる。俺一人が頑張っても、お前が心を開いてくれなければ、どうしようもないんだ」
「……」
「お前がイヤがることはしない。約束する。だから、俺を信じてほしい」
「私が怖がってること、気付いてたんだ」
「ああ。だからアイツが許せなかった」
「アイツ?」
「スタニルだ。アイツのせいで、お前の中にあった恐怖心が蘇った」
「……」
「何年もかけてお前の中にある恐怖心を取り除いてきたのに、アイツは数日でよみがえらせやがった」
「……」
「それに、お前を汚そうとした」
「……ショウ」
「お前が怖がるものは、俺が全部消してやる」
「……ごめんなさい。ショウは、いつも私のことを考えてくれてた」
「わかってくれればいい」
「壁を作ってたのは、私だった」
「今までのことを思い出して自分を責めるのはよせ。これからのことを考えばいいんだ」
「でも、ショウに悪いことばかりしてきた」
「ラル、頼むから泣かないでくれよ。お前を責める気なんてないんだから」
「自分のことを棚に上げて、私はなにをしてきたんだろう」




