56-2 修復
ショウはテーブルに置いてあるラルのノートPCを取ると「見るぞ」断ってパスワードを入力し、インプットされたデータに目を通していく。
「これだけの任務を一人でこなしてたのか?」
「……」
「ミランドたちに呆れられて当然だな。グループの通信欄に俺のことが報告されてる。やはり人間を仲間にするのは避けるべきだったんだ。すぐに除名してほしい」
「ミランドたちって?」
「フロス アクアエ、イータル ヴェンティの両女王に会った。ミランドが会わせてくれた」
「昨日の夜に?」
「ああ。コテンパンに言われたよ。返す言葉がなかった。この前はペドニロスのところに行ったんだってな。一週間も地下牢に閉じ込められて、脚のケガには、傷薬しか、塗られてなかったと、話してくれた……戻って来たときは、生きてはいるという、状態だったと……聞いた……」
「……あの時は、本当に、ダメなんじゃないかと、思った」
「……」
「気付いたときは、湖の畔に戻ってた」
「お前がそんな状態のとき、俺は呑気にナディアたちと話してたのか。俺よりも彼女たちのほうが頼れるな」
「そんなことない! ショウがいてくれたからここまで来られた。私一人だったら、どこかで命を落としてた」
「俺は何もしてやらなかった。ここまで来られたのはお前自身の力だ」
「そんなことない。一緒にいてくれただけで、どんなに心強かったか」
「じゃあ、これからも、一緒にいていいだろう?」
「それは……」
その時、部屋の呼び鈴が鳴ったのでショウが出ると「失礼するよ!」恰幅のいい中年男性がショウを押しのけて入ってくる。
「ちょっと! いきなりなんですか!」と聞いてラルは額にチップを貼り、バンダナをすると「あんたがラルとかいう人か!」顔を見るなり怒鳴りつけてくる。
「断りもなく女性の部屋に入るなんて失礼じゃないですか!」ショウが前に立って止めると「あんたは黙っててくれ!」
「お父様! 彼を怒鳴らないで!」あとから入ってくるナディアが止めるので「あ、ああ、すまなかったね」と言うとラルのほうを向き「あんた、娘を殴ったそうだが、どう責任を取ってくれるんだ!」
「ちょっと待ってください!」再度前に立つショウ。
「君も、男を蔑ろに扱うような女と一緒に仕事する必要ない!」
「そうだわ。これを機に仕事のパートナーを解消したほうがいいわ」ショウの腕をつかみ「こんな人と一緒に仕事することない!」とラルを指さす。
「さあ、どう責任を取ってくれるんだ! 娘に手を上げてここに居られると思うな! 追い出してやる!」
「では、あなたの娘が彼女にした仕打ちに対しては、どう責任を取るつもりなんですか?」




